2011 Fiscal Year Research-status Report
保育所に通う外国につながりのある子どもと保護者の支援に向けて
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23530794
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Research Institution | University of KinDAI Himeji |
Principal Investigator |
松島 京 近大姫路大学, 教育学部, 講師 (20425028)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 外国につながりのある子ども / 外国籍児童 / 子どもの権利 / 子育て支援 / 保育所と小学校の連携 |
Research Abstract |
本研究は、「外国につながりのある子ども」とその保護者が小学校就学の際に抱えている課題を明らかにし、保育所を中心とした、地域における生活支援のシステムを構築するための方策を検討することを目的とする。外国につながりのある子どもに対する保育や教育をめぐる調査研究は、日本における外国人とその子どもの増加により、現在も著しい展開を見せている。平成23年度は、国内における外国につながりのある子どもに対する保育や教育をめぐる先行研究についての整理を行い、本研究における課題の明確化を中心的に行った。 現時点での先行研究を整理した内容は次のとおりである。外国につながりのある子どもに対する保育や教育については、「保育の国際化」、「保育における多文化共生」、「外国人児童・生徒の受け入れ体制」、「受入れから浮かび上がってきた学校文化の特質」、「外国人児童・生徒の適応プロセス」などの調査・研究が行われてきた。外国につながりのある子どもの保育や教育をめぐっては、多文化共生を視野に入れた保育環境の構築や、日本における学校への適応や日本語教育のあり方などが焦点になっているといえよう。さらに、外国につながりのある子どもの不就学は、学校という制度だけの問題ではなく、子どもとその家族のおかれている環境にも要因があることや支援の必要性を指摘する研究もなされてきている。 このように、外国につながりのある子どもの保育や教育をめぐる問題については、多くの研究、実践が積み上げられている。これら知見をふまえた上で、平成23年度の研究では、1)就学前の子どもに関する検討、2)家族への支援のあり方に関する検討、3)不可視化しやすい子どもの問題についての検討、の3点を課題とし研究を進めることの重要性を提示した。また、その際の地域社会における支援のあり方のひとつとして、保育所が中心となることの有用性についても提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(2)おおむね順調に進展している、とした理由は次の通りである。 平成23年度の研究計画として、(1)先行研究の整理と蓄積、(2)先進地域へのヒアリング調査、(3)保育士を対象としたインタビュー調査(プレ調査)を行うことを予定していた。(1)については主として国内の先行研究を幅広く収集し、一定の整理を行うことができた。(2)ついては、先進地域へのヒアリングを計画するにあたっての課題設定が不十分であると判断し、(1)を重点的に行うこととしたため、当初予定していた地域への訪問は行わなかった。しかし、他の研究会や報告会等に参加し、他地域における実践を知ることができた。(3)については、プレ調査の実施に到達することはできなかったが、これは取り急ぎ実施をするよりも調査準備を入念に行うことを優先したことによるものである。その結果、(1)の充実化により、半構成的インタビュー調査を実施するにあたっての課題設定を研究計画当初よりも明確化することができた。これにより、次年度以降の調査を当初予定よりもスムーズに進められる見通しが立てられた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度使用予定の研究費が生じた状況として、1)国外における先行研究整理が不十分であったこと、2)保育士を対象としたインタビュー調査(プレ調査)が実施できなかったこと、があげられる。「現在までの達成度」で記したように、平成23年度は、インタビュー調査をより良いものにするために国内の先行研究整理を重点的に行い、課題の明確化に努めた。そのため、当初予定していた研究費を次年度以降に使用することとなった。このことをふまえ、平成24年度以降の研究計画は次の通りである。 (平成24年度) 1)引き続き先行研究の整理と蓄積の継続を行う。外国人の生活保障や移民政策の調査研究など国外の研究も視野に入れ、国内外の関連文献の収集及び検討を継続して行い、研究の精度を高める。関連する研究会等に参加し、研究動向や政策動向の把握及び情報収集を行う。2)保育士を対象としたインタビュー調査を行う。姫路市内の公立保育所の所長及び保育士へのインタビュー調査を行う。3)小学校教諭を対象としたインタビュー調査を行う。姫路市内の公立小学校の校長及び小学校教諭へのインタビューを行う。 (平成25年度) 1)調査内容の分析と考察を行う。前年度の調査データの分析と考察を行い、文献レビューと関連づけることにより、(1)外国につながりのある子どもとその保護者の小学校就学における現状を把握し、(2)保育所から小学校への連携にあたっての課題を明らかにした上で、(3)外国につながりのある子どもと保護者への支援のあり方や、保育所の役割の重要性の提示を行う。2)研究成果の報告を行う。研究結果をもとにその時点で考察したものを、国内学会において報告する。日本保育学会、日本対人援助学会での報告を検討している。また、この研究成果は、論文として学内紀要及び日本保育学会や日本対人援助学会等の学会誌に投稿をし、最終的に成果報告書としてまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(物品費について) 外国につながりのある子どもに対する保育・教育をめぐる先行研究と政策展開をまとめ最新の動向をおさえるために、国内外の文献を多分野(教育・保育、福祉、移民政策、多文化共生、外国人労働問題、等)に渡り収集し整理を行う。そのため、国内文献及び外国語文献を購入する費用が必要である。平成24年度は特に国外文献の収集を積極的に行う。また、これら資料の整理や、調査データの記録や保存のために、記録媒体や文具類を購入する費用が必要である。 (旅費、および人件費・謝金について) 1)研究の基礎となる、研究に関する情報収集のための旅費、2)インタビュー調査にかかる旅費、3)調査分析にかかるテープ起こし代金、4)研究成果の報告にかかる学会参加のための旅費、論文投稿時の英語要旨チェック代金、が必要である。特に、旅費が多くかかるのは、視察調査及びインタビュー調査、資料の収集、及び学会報告参加に際して、研究チームとして3人で移動及び実施をするためである。視察調査地としては、東海地域を想定している。インタビュー調査地は姫路市内である。また、情報収集のために参加をする関連研究会、発表を行う学会については関東近辺を想定している。 (その他について) 先行研究の整理にかかる国内文献及び外国語文献の複写費が必要となる。また、研究成果の報告にかかる学会参加のための参加費、論文投稿時の投稿費が必要となる。
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Research Products
(2 results)