2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530804
|
Research Institution | University of Shizuoka,Shizuoka College |
Principal Investigator |
佐々木 隆志 静岡県立大学短期大学部, その他部局等, 教授 (50178654)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
Keywords | 終末ケア / 特別養護老人ホーム / サービスの質 / 社会福祉専門従事者 / 終末の場 / 介護福祉士 |
Research Abstract |
本研究の目的は、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の入所者が、どのような終末を迎えているか明らかにすることにある。平成23年度では二つの研究を実施した。第一に終末ケアに関連する先行研究を文献を中心に行った。第二に、特別養護老人ホームの終末の聞き取り調査である。前者では、終末ケアの先行研究ではRossの終末観・倫理観の分析を行った。その研究については死生学(thanatology)の先行研究の分析も行った。ロバート・A・ニーメヤーやデイヴィド・ヴァン・ブラントの、その死への態度に関する実証的研究がある。ネルダ・サマレルは死のプロセスに関する論考を発表しており、それらは臨床に基づくものであり、時には心は動かされもすると述べている。 上記の先行研究から特養における終末ケアに関わる専門職のケアのあり方の示唆を得ている。後者では、静岡県内の特別養護老人ホーム入所者が、死が近づいた時にどのような終末を迎えているか調査した。平成23年度研究実績は以下の通りである。(1)居宅サービスきめ細かく利用している場合、終末ケアの満足度は高い。(2)終末ケアプログラムに家族の意見が反映されている場合、終末ケアの満足度は高い。(3)終末ケアについて、施設からのとらえ方では、施設入所時から終末ケアとする考え方がある。(4)終末ケアは、通常の施設ケアのなかに位置する、終末ケアマネジメントを必要とするケアが必要であるとする考え方がある。つまり、終末ケアは施設のケアの範疇にあるとする考え方と、施設業務の外側にあるとするとらえ方がある。 平成23年度の最大の成果は、前述した成年後見制度が施設の利用者のなかにいた点である。A施設では、昭和42年の開所以降サービス利用者が任意成年後見制度を利用していた者がいた。これらのの研究成果から平成24年度では終末ケアの倫理観を構築し、終末ケアの調査用紙作成に取り組む。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度研究では、静岡県内の特別養護老人ホームの施設長及び介護職員に対するインタビューから、以下の点が明らかにされた。(1)開設年が20年以上の特養の一部の施設では利用者の死亡により、家族及び親類等の引取りがいなく福祉事務所へ相談しているケースもみられた。(2)施設利用者自身が生前中に任意成年後見人制度の手続きを行っており、死亡後生前中の誓約により財産等の処分を行ったケースもあった。(3)介護保険法の改正により、サービス体系が大きく変わろうとしている。そうした状況をもとに、施設のサービスの質の向上により、マンパワー不足化がどこの施設でも共通の課題である。(4)終末ケアの専門的アプローチについては、施設の経営理念と大きく関係している点が明らかにされた。(5)終末ケアは医療職の範疇と考え、死が近づいたとき医療機関へ送致するケースもみられた。(6)終末ケアを介護の延長線上に考え、終末を看取ることで「介護は完結」するとした考え方。以上のことから特別養護老人ホームにおける終末ケアの取り組みでは、施設の経営理念、人員体制、地域性、及び職員組織と関連性があることが明らかにされた。平成23年度の自己評価では、前述した欧米の終末ケア先行研究の分析に膨大な時間を費やし新たな知見を得られた点では評価できるが、施設の終末ケアについての聞き取りの部分が不十分であった点が反省点である。また、現在介護福祉士養成校のカリキュラム改正により、今後専門科目に導入される、医療ケア関連の科目履修が必須化される。つまり、従来の介護福祉士の業務に加えて医療的な行為が、一部担える介護福祉士が今後養成されていくことになる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度計画では、平成25年度に実施予定の「終末ケア実態調査」の質アンケート用紙の検討である。調査項目は以下の5つの柱より構成される。調査項目は以下の通りである。(1)終末ケアの場所について・・・施設死、病院死、在宅死か等(2)終末ケアの内容、終末ケア介護状況終末ケアの介護職員介護項目終末ケア職員体制。(3)終末ケアの看取り状況について・誰が最後看取っていたか。施設職員か家族かなど。(4)終末ケアに対する基本理念・・・施設看取り推進か、終末を病院へ依頼するか。(5)終末時における家族や地域の関わりについて・・・終末ケアについて、施設と家族の関わり及びその頻度について、死亡後の施設や家族の対応について、身寄りがいない場合の対応について、お墓について、死亡後のケア体制についての有無等を明らかにする。上記の質問項目作成後、静岡市内の特別養護老人ホーム施設3箇所と打合せを行う。質問項目作成後、本学「静岡県立大学短期大学部倫理委員会」へ申請し、アンケート実施の許可承認を得る。・施設長及び職員へ聞き取りを行う。20箇所予定(1)特別養護老人ホーム A施設長と質問紙の検討 (2)特別養護老人ホーム B施設長と質問紙の検討 (3)特別養護老人ホーム C施設長と質問紙の検討 ◎介護職員へのインタビュー・・・20人予定である。研究課題としては、介護福祉士の医療行為が一部担えるようになるため、生活の場としての特養から医療ニーズの高い高齢者にも、サービスを提供することが可能になってくる。【対応策】特別養護老人ホームの施設職員、介護職、医療食の業務範疇を整理し、研究を遂行する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度では施設へのインタビュを予定しており、テープ起こしのアルバイト雇用を予定している。また、終末ケア関連の文献購入、PC周辺機器の整備及び専門的な指導助言を受けるため、東京出張も予定している。(17,000円×5回=85,000円)国立国会図書館への文献複写、研究成果公開報告会の開催費用、日本社会福祉学会参加費用等である。尚、具体的な支出項目については以下のようになる。次年度研究予定では、調査用紙の作成、終末ケアの項目の整理でアルバイトの雇用及び終末ケア関連の文献購入予定である。詳細は、以下の通りである。・アンケート項目の入力及び作成〔アルバイト雇用〕(6400×20日=128,000)、・終末ケアの調査項目の分類、KJ法によるカテゴリー別の整理(アルバイト雇用:6400×10日=64,000)、・キャノンインクジェットトナーの交換〔消耗品8700×10本=87,000〕、・『終末ケアマネジメントの研究』終末ケア研究成果分の購入(3570×30冊=107,000)、・上記の文献の送付[350×20箇所=7,000]・パソコンのメンテ費用[80,000]、以上の研究経費は、無駄を無くし研究者自身も研究費の支出内容をよく確認し、事務局で物品の検収を購入時に行い研究遂行の予定である。平成23年度では当初の予算を下回り、24,695円残額が生じた。この平成23年度繰越分については、平成24年度に執行予定である。
|
Research Products
(2 results)