2011 Fiscal Year Research-status Report
高齢者サロンの展開方法に関する研究―小地域別ソーシャル・キャピタル分析から
Project/Area Number |
23530805
|
Research Institution | Beppu University Junior College |
Principal Investigator |
山村 靖彦 別府大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (80455089)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | ソーシャル・キャピタル / 高齢者サロン / 支援 / 指標 / 地域福祉 / コミュニティソーシャルワーク |
Research Abstract |
当年度は、まず文献研究を通じて、国内外及び学際的視点からのソーシャル・キャピタル論をめぐる動向及び評価について分析・検討を行い、多角的な視点から高齢者サロンへの援用を考察した。とりわけ、海外の文献・研究について精査した。これに並行して、これまでの3ヶ年に及ぶ調査結果を用い、高齢者サロンの自主運営の継続が可能となることを視野に、そのための支援の指標を以下のとおり明らかにした。 まず、「支援開始の必要性に関する指標」としては、参加率が低いあるいは減少傾向にあるということがあげられた。この場合、E地域では年間平均値の70%未満が、参加率が低いと判断できる目安として定められた。次に、「支援終了の妥当性に関する指標」としては、参加率の増加傾向に加えて、ソーシャル・キャピタルが成熟していることがあげられ、E地域の場合、アンケート調査の結果から導き出された「ソーシャル・キャピタル高評価回答率」の74%という割合がソーシャル・キャピタルの成熟度をみるときの目安になった。以上2つの指標は、インタビュー調査の「困難度」や「運営形態」等に関する聞き取りの結果と照らし合わせ総合的な評価を行うことで、より的確な判断が行われるものと思われた。 なお、高齢者サロンの自主運営が継続される要件としては、ソーシャル・キャピタルの成熟と活動に対しての支援が必要であることが明らかとなった。また、サロンの自主運営が継続される意義として、高齢者の主体的な行動と社会参加に貢献する点が考えられ、こうした高齢者の動向は地域社会のさらなる構築につながっていくものと考察された。 以上の結果は、本研究の主軸である高齢者サロンの展開方法を追究するうえでの基盤研究として重要な位置づけにある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究を継続するなかで、本研究1年目に博士の学位が取得できたことは、今後の本研究の進行大いにプラスとなる。 高齢者サロンの支援をめぐる研究においては、支援の「指標」と「方法」を明らかにすることが重要であると研究者は捉えており、今回の学位論文は、このうちの前者を明らかにしたものである。 この結果を得たことにより、本研究のメインテーマである高齢者サロンの方法論について、次年度以降は、当初の計画よりもさらに深くかつ多角的に考察することが可能となった。これにより、本研究における予想される結果や意義は、当初のそれを大きく超えることが期待できる。 また、当年度の研究成果からは、地域福祉分野におけるソーシャル・キャピタル論導入の有効性についても追求することができた。このことを論文3編、共著書1編にて発表できたことも当初の計画以上の進展と評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度の前半は、アンケート用紙の作成を行う。なお、アンケート用紙については、OECDや内閣府によるソーシャル・キャピタル調査の先行研究をもとに検討を行い、これに地域福祉学の視点を加味し、さらに調査対象地域の地域構造に応じた内容に編集し作成する予定である。質問票は回答者にとって分かりやすいものにし、A4サイズ2枚程度にとどめるなどの工夫を行う予定である。 以上のアンケート用紙を用いて、年度の後半にはソーシャル・キャピタルに関する調査と高齢者サロン調査を実施する。 ソーシャル・キャピタルに関する調査については、大分県佐伯市の20地域、約400世帯、13歳以上の約1,000名に対して実施する。調査方法は留置調査法により行い、佐伯市社会福祉協議会職員2名と民生児童委員40名、福祉委員50名の協力を得て行う予定である。 高齢者サロン調査については、調査対象である20地域で実施されている高齢者サロンに関する平成23年度の参加率について、社会福祉協議会に実施の結果を求め算出する予定である。 以上、平成24年度は翌年度の最終分析・考察に向けて、調査結果のデータ化までをすみやかに行う計画をしており、その進捗過程を学会にて発表する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、約1,000名を対象としたアンケート調査を予定していることから、調査協力者(佐伯市社会福祉協議会職員2名と民生児童委員40名、福祉委員50名)に対する謝金、その他集計作業等に対する経費を計上している。 また、関東および関西を想定した学会参加・発表の旅費も計上している。
|