2011 Fiscal Year Research-status Report
余暇活動の「市民権的見解」に基づく知的障害者のための森林活動の方策検討
Project/Area Number |
23530806
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Research Institution | Hokkaido Research Organization |
Principal Investigator |
佐藤 孝弘 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部林業試験場森林環境部機能グループ, 研究主幹 (50414256)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 知的障害者 |
Research Abstract |
本研究は、知的障害者の森林での余暇活動の社会的定着のため,福祉サイドに望ましい形の森林活動のあり方の検討を目的とする。平成23年度は、北海道上川管内・空知管内の知的障害者施設と連携して森林体験活動を行い、1)知的障害者のコミュニケーションの実態把握と評価、2)施設状況に応じた森林活動の試行と評価に取り組んだ。 コミュニケーション分析から、1)森林活動に参加している施設利用者のコミュニケーションの特徴を分ける軸として「コミュニケーション手段(言語的-非言語的)」、「活動時の態度(能動的-受動的)」、「課題解決の姿勢(課題解決-緊張緩和)」が抽出された。2)言語的コミュニケーションが活発な人たちは意見・質問を述べるなど、能動的姿勢をもって活動に参加していた。3)言語的コミュニケーションに課題を抱える人たちは非言語的かつ受動的、あるいは、非言語的ながら能動的姿勢(非言語による自発的行動)をもって活動に参加していた点が明らかとなった。 また、施設状況に応じた森林活動の試行と評価は森林活動の経験を有する施設(上川管内)と森林活動の経験が少ない施設(空知管内)の双方で実施した。評価項目は活動の時間、安全管理等の17項目(5段階尺度)と活動への自由記載で構成した。評価結果に因子分析を適用したところ、1)活動の評価基準として「楽しさ・わかりやすさ」、「参加の公平性」、「安全性・時間の適切性」、「モチベーション」が抽出された、2)内容が理解しやすく、森林の素材に触れる機会が確保されている活動への評価が高い、3)自由記載からは、(1)利用者の森林への興味関心が喚起された点、(2)障害の重い利用者への配慮が必要な点、(3)活動への感想や活動中の施設利用者の様子に係る意見等が寄せられ、4)前項のうち、特に(2)は、森林活動への取り組み経験が少ない施設に顕著であった点が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は研究協力施設との連携・連絡、施設利用者のプライバシー等に配慮したデータ収集、得られたデータの解析共にほぼ予定どおりに調査研究を進めることができたと考える。しかしながら、コミュニケーション分析に必要な森林活動時の映像データのプロトコル作成に時間を要する場面が見られたので、調査研究の進め方(事前準備・連絡調整・手順)にさらなる計画性を盛り込み、効率の良い研究業務遂行を心がけたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において取り組んでいる、コミュニケーションや森林活動の試行・評価から得られる結果は、森林林業関係者をはじめとする、障害者との接触経験が少ない関係者がこうした人たちと向き合う時に有用な情報と考えられ、さらに事例を積み上げて精査を進めることが重要である。コミュニケーション分析においては、解析対象とする森林活動事例を増やし、具体的な配慮事項の解明を進めたいと考えている。また、施設状況に応じた森林活動の試行と評価においては、現行の連携施設以外の知的障害者施設にも協力要請を行って森林活動の提供を施行し、施設側の立場や観点に立脚した望ましい森林活動のあり方について考察を進めたい。さらに、平成24年度からは申請時の計画に従い、地域社会からの支援のあり方に係る調査を開始することとなっており、森林林業行政機関、障害者の余暇活動を支援するNPO法人等からの情報収集を予定しており、計画に沿った形で取り組みを進めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は現行の連携施設における調査のほか、道内各地域の知的障害者施設との連携による森林活動提供や地域社会からの支援のあり方に係る調査のため、旅行業務が多くなることが想定される。このため、旅費並びに移動に伴う車両使用に係る経費(その他の経費)を多く要すると予想されるが、調査内容や調査場所を精選し、効率的かつ厳密な計画に基づく予算執行に努めたいと考える。また、物品に係る支出は森林活動の際に用いる教材・教具作成に必要な原材料や器具類等が主体で、規模の大きな機械類等の購入は予定しない。 科学研究費の予算執行にあっては、その適正なあり方について指導や情報を頂いているところであり、これらに従い、適正な予算執行により有用性の高い研究成果の作出に努める。
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