2011 Fiscal Year Research-status Report
攻撃的情報の累積的影響:閾下刺激実験およびネットいじめ行動の調査を通して
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23530811
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
吉田 富二雄 筑波大学, 人間系, 教授 (80182781)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湯川 進太郎 筑波大学, 人間系, 准教授 (60323234)
藤 桂 筑波大学, 人間系, 助教 (50581584)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 累積的効果 / 無意識 / 閾下 / サブリミナル / 潜在連合テスト / 犯罪不安 |
Research Abstract |
平成23年度は,実施計画に基づき,日常的に情報へ繰り返し接触することによって生じる,無意識的な接触の累積的効果を実験的に検討した。その際,普段から身近に接触する情報として防犯情報に着目した。防犯情報は日常生活に豊富に存在し,意識するとせざるに関わらず,それらへの接触が我々の不安に影響を及ぼしている可能性がある。こうした観点から,防犯情報への無意識的接触が,潜在的・顕在的な次元における環境へのリスク認知及び犯罪不安に及ぼす影響を検討した。 まず,つくば市内において防犯情報を収集し,予備調査からよりインパクトの強い防犯情報を抽出した(「特別警戒中」,「不審者出没」,「空き巣警戒」など)。その上で,実験参加者を3群に分け,情報への接触を行った。まず,5種類の防犯情報にそれぞれ10回ずつ閾下(14 ms)で接触するセットを設定し,累積接触群ではこの接触セットを3日間ほぼ同時刻に1セットずつ実施した(計150回)。一方,集中接触群ではこの接触セットを一時点で3セット連続して実施し(計150回),統制群では接触を行わなかった。そして,接触直後と接触1週間後に,環境へのリスク認知と犯罪不安を潜在的な次元と顕在的な次元で測定した。結果,潜在的測度では,接触直後において,統制群と比べて集中接触群で環境への安全性が高まるが,逆に累積接触群では自らの被害不安が高まった。顕在的測度では,接触から1週間後において,統制群と比べて集中接触群で自らの被害可能性を高く見積もり不安を強く感じるが,累積接触群で自らの被害という身近な範囲を超えて,社会全般へも不安を強く感じることが示された。 これまで,メディアなど日々の情報との接触の影響は相関研究により検討されてきた。本研究は,無意識的な情報への接触であってもそれが日々積み重なることで,潜在・顕在の両面で影響を及ぼすことを実験的に示したものと位置づけられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に予定された,情報への反復的接触を日々繰り返すことによる累積的な効果の検討という課題は,緻密な準備に基づき計画通り実施された。特に,情報の閾下呈示と,情報への接触による影響を潜在的測度によって捉えるという新たな試みにより得られた結果は,当初の計画を越える優れた知見に値するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
情報への反復的接触による累積的影響を総合的に検討する本研究課題において,平成23年度は実験的方法によってその影響の基礎的な側面を明らかとした。今後の推進方策としては,23年度の知見を,より現実的かつ実践的な側面へと応用することを計画している。そのため,特に無意識的な情報への反復的接触が問題となるインターネット上において,ネットいじめという現象を取り上げ,攻撃情報への接触からネットいじめへと至る過程を調査的方法によって検討し,情報への反復的接触の持つ影響過程の全体像を明確化する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は,今年度の知見を,より日常的な場面へと拡張し,ネット上での攻撃的情報への反復的接触が,ネットいじめ行動に及ぼす影響について,調査により検討する。そのため,ネットいじめ加害経験者を対象に,インターネット調査会社(gooリサーチを予定)を介した調査費用が必要となる。また,得られたデータを解析するための人員を雇用するための費用,及び資料整理のための費用として,研究費を使用する。さらに,今年度に得られた知見を学会発表として公表するための旅費としても使用する。
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Research Products
(11 results)