2012 Fiscal Year Research-status Report
攻撃的情報の累積的影響:閾下刺激実験およびネットいじめ行動の調査を通して
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23530811
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Research Institution | Tokyo Seitoku University |
Principal Investigator |
吉田 富二雄 東京成徳大学, その他部局等, 教授 (80182781)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湯川 進太郎 筑波大学, 人間総合科学研究科(系), 准教授 (60323234)
藤 桂 筑波大学, 人間総合科学研究科(系), 助教 (50581584)
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Keywords | インターネット / 攻撃性 / 累積的接触 |
Research Abstract |
平成24年度は,インターネットに繰り返し接触することによって生じる効果について検討するために,ウェブ調査を実施した。 具体的には,インターネットの発展が著しい中国において,都市部在住の高校生300名を対象にウェブ調査を実施した。この調査では,インターネットの利用頻度,およびインターネット上での行動内容が,現実生活における攻撃性(怒り感情の持続しやすさ)にどのような影響を及ぼすのかについて検討した。その結果,インターネットを頻繁に利用しているほど,ネット上での攻撃的言動もより多くなされており,特に携帯電話からのインターネット利用において顕著であった。すなわち,手軽に利用でき,ネット上の様々な情報への累積的接触がなされやすい媒体において,攻撃的言動が容易に生起しやすいことが示唆された。加えて,こうしたネット上での攻撃的言動は,現実生活における怒りの持続しやすさにも促進的影響を及ぼしていることも明らかとなった。ゆえに,ネット上で喚起された攻撃性は,そのまま現実生活にも波及し,持続的影響を及ぼしうる可能性が推察される。さらに,ネット上は危険であるという認知が,ネット上での攻撃的言動と現実生活での怒りの持続の両方に対して正の相関を示していた。したがって,ネット上における危険および攻撃的情報に対して普段から接触していることで,上記のネット上の攻撃的言動の生起,および現実生活での怒り感情の持続がさらに生じやすくなることも明らかとなった。 すなわち今年度の研究結果は,昨年度の実験研究において示された,情報への累積的接触による潜在・顕在的態度への影響プロセスが,日常場面の中においても同様に見出されることを示したものと位置づけられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に予定された,実験研究において見出された知見を日常場面にも拡張し,調査研究によって検討するという課題は,当初計画していた以上に進展している。特に,ネット上での攻撃的言動および攻撃的情報の接触が,現実生活における攻撃性の持続をもたらすという知見は,研究計画段階の予測を超えて得られた知見である。
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Strategy for Future Research Activity |
情報への反復的接触による累積的影響を総合的に検討する本研究課題において,平成23年度は実験的方法によりその基礎的側面を明らかにした。また平成24年度は調査的方法により,平成23年度に明らかにされた影響過程が,日常場面においても同様に見出されることを示した。平成25年度は,最終年度としてこれらの知見を総合しつつ,現在問題視されている”ネットいじめ”という現象に着目する。そして,ネットを介した攻撃的情報への接触が,どのようなプロセスを経て,実際のネットいじめ加害行動に結びつくかを,高校生を対象とした調査的方法によって検討する予定である。また,そのプロセスが,主観的・意識的にはどのように経験されているかを確認するために,同じく高校生を対象としたウェブインタビューを計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,これまでの知見を”ネットいじめ”という現象の解明に応用し,その背後に存在する心理的過程について分析する。そのため,ウェブ調査およびウェブインタビューを実施する際の,インターネット調査会社への調査委託費用が必要となる。また,得られたデータを解析するための人員を雇用するための費用や,資料整理のための費用として,研究費を使用する予定である。加えて,最終年度として,これまでに得られた知見を統合しつつ,国内外の学会にて発表する際に発生する費用にも充てることを計画している。
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Research Products
(9 results)