2012 Fiscal Year Research-status Report
コンピュータシミュレーションを用いた恋愛関係形成過程の研究
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23530812
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
高木 英至 埼玉大学, 教養学部, 教授 (20163165)
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Keywords | 計算モデル / コンピュータシミュレーション / 恋愛 / 対人関係 |
Research Abstract |
恋愛関係形成のAgent Based のシミュレーション・プログラムのコード化を進め、試行的なシミュレーションを体系的に実施した。概ね次のことが分かった。1) 社会的望ましさを相手に求める傾向は、望ましさが高い者ほど強い、という傾向が再現された、望ましさによるこの相違は,両性が自由にプロポーズできる場合に顕著だった。2) 社会的に望ましい者は恋愛における積極性(プロポーズや受諾のしやすさ)が低くなる傾向が見出された。またプロポーズ権に不平等があるとき,プロポーズ権のないエージェントは積極性が低下した。3) 相手との釣合いを求める傾向は社会的望ましさの高いエージェントほど強かった。釣合いを求める傾向はまた、プロポーズ権が両性にある場合に高くなる。さらに、戦略進化の結果としてカップル間の望ましさにおける釣合いが高まることもシミュレーションで観察された。これらのシミュレーション結果は、相互作用状況の構造的要因から個人レヴェルの志向が生まれる可能性を示すと考えられる。 ここまでの作業を行う過程で次の課題の解決が重要であること分かった。第1は、進化的計算の仕方を調べ、国際的慣行に合わせる必要があることである。第2は、これまでは検討する状況に合わせてソースコードを書き換えているけれども、一般的な状況に適用できるプログラムを作り、実行時のパラメータ指定で条件設定ができるようにする必要があることである。第3に、これまで組み込んできた計算上の前提の数が多いため、より簡略化したモデルを試し、同様の結果を算出できるか否かを確認することである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シミュレーションのモデルをAgent Based でコード化できた、という意味で、計画は順調に進んでいると考えている。ただしいくつかの課題がある。 第1に、現行のプログラミング環境(言語を載せるだけでもメモリをかなり使う)を前提に、エージェント数を増やせるようにコード化し直す必要があると感じている。これまでの検討では、エージェント自体の記憶容量よりも、相互作用の履歴の記憶容量がかかることが分かっている。相互作用の記憶容量は、エージェント数の二乗で増える。相互作用の履歴を計算途中でいったん外に書き出すような仕組みを入れる必要がある。 第2に、目的の効果を見出せる状況設定を設計し直す必要が生じている。目的に合わせて状況設定をするのではなく、モデルの状況設定をパラメータ指定で行えるような、より一般的なモデルに書き直す必要があり、そこで時間を消費することになると思う。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、再度文献研究を進め、作成中のモデルで効果を推測できる状況を確定し直すことを考えている。第2に、確認すべき効果を一般的なモデルを実験によって体系的に検討する。第3に、最終年度である次年度は、見出された観測結果を取りまとめ、どのような含意があるかを評価する必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
第1に、再度、文献研究のために図書を購入したい。第2に、プログラミング言語の版が更新されているので、言語ソフトの購入に費用を充てる。第3に、成果の公表や意見交換、専門家の招へいなどで旅費を支出したい。
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