2012 Fiscal Year Research-status Report
ソーシャルスクリーニング利用の心理・影響に関する実証的研究
Project/Area Number |
23530814
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
小笠原 盛浩 関西大学, 社会学部, 准教授 (00511958)
|
Keywords | ソーシャルフィルタリング / ソーシャルメディア / マスメディア / 情報行動 / 流言 |
Research Abstract |
平成24年度は当初の研究実施計画を見直し、ソーシャルフィルタリング利用行動調査を一時保留し、東日本大震災直後に流布したソーシャルメディア上の流言の拡散・収束の心理的メカニズムの解明に優先的に取り組むこととした。計画の見直しを行った理由は以下の3点である。 ①流言は人々による集合的な現状解釈行為であり、ソーシャルメディア上の流言は情報の取捨選択、つまりソーシャルフィルタリングが広範囲に行われた現象といえる。②計画ではソーシャルフィルタリングにおける情報取捨選択面に重点を置いていたが、流言分析により情報共有面を把握することで、ソーシャルフィルタリングの双方向的なメカニズムをより精緻に理解できる。③平成24年9月~平成25年2月にTwitter社が震災直後1週間の全ツイート(投稿)データを研究者に公開し、流言発生から収束までの全言説の分析が可能となった。流言分析を優先しソーシャルフィルタリング利用行動調査を精緻化することが、ソーシャルフィルタリング研究にとって有効と考えられる。 流言分析では非常に大量のデータを処理する必要があるため、数値処理に長けた研究者、マスメディアの関係者等も含むチームで取り組んだ。なお、データ提供等は無償で行われ、科研の予算を使用する必要は生じなかった。ソーシャルメディア上の流言の分析の結果、不安感が高い状況では流言打消し情報よりも流言のほうが共有される傾向が強いことなどが確認された。流言分析の知見の一部は、10月の「東日本大震災ビッグデータワークショップ Project311 報告会」にて発表した。 平成25年度は、平成23年度に実施した定性的調査、平成24年度に実施したソーシャルメディア流言分析の知見を取り入れソーシャルフィルタリング利用行動の定量的調査を実施し、総合的な分析結果を報告書にまとめる予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、SNSやTwitter等で友人の推薦を利用してインターネット上の情報を取捨選択する「ソーシャルフィルタリング」の利用実態およびその影響について定性的・定量的な調査・分析を行い、ソーシャルフィルタリング利用・影響の規定要因ならびに、今後懸念される情報環境の偏りや情報格差への影響を明らかにすることである。 ソーシャルフィルタリングの考察を進めるなかで、その双方向的な側面の重要性も明らかになってきたことから、平成24年度は計画を見直し、ソーシャルメディア上の流言分析に研究努力を振り向けることとした。 東日本大震災直後の1週間分のTwitter全投稿データを分析することで、マスメディア情報とソーシャルメディア情報の受容のされ方の違いや、情報の取捨選択の心理的メカニズム(読者が期待する情報が選択される)が明らかになったことから、時期こそ次年度にずれ込むことになったものの、当初の計画よりもいっそう精緻な定量調査を実施することが可能になったことから、当初計画と対比した場合には達成度はやや遅れているが、実質的には順調に推移していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は平成23年度に実施した有名ブロガーインタビュー・先進的インターネット利用者グループインタビューで得た定性データ、平成24年に取り組んだソーシャルメディア上の流言の拡散・収束メカニズムの分析結果を参考に、ソーシャルフィルタリング利用行動調査を実施する。 同調査の目的は一般的なインターネット利用者のソーシャルフィルタリング利用実態とその影響について、情報取捨選択・情報共有の両面から定量データを収集・分析することである。インターネット利用者を対象とし、SNSやTwitterの利用の有無などのサンプルの抽出条件を設定する必要があることから、オンラインアンケート調査によるデータ収集を選択する。 一般にオンライン調査会社のモニターはインターネットのヘビーユーザーが多い傾向があるため、できる限り人口分布に近いモニターを持つ調査会社を選定することで、サンプルの偏り回避に努めることとする(そのため通常のオンライン調査費用と比較するとサン プリング費用がやや割高となる)。オンラインアンケート調査で得られた定量データは、ソーシャルフィルタリングの利用・影響に関する仮説・モデルの検証に使用する。 最後に、平成23・24・25年度の定性的・定量的調査の分析結果を報告書にまとめて印刷し(100部程度)、関係領域の研究者・企業等に配布するとともに報告書のPDFをウェブで公開する。また、ソーシャルメディア流言分析も含め、研究で得られた知見を研究論文として国内外のジャーナルに投稿し、学術論文の刊行を目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度実施予定であったソーシャルフィルタリング利用行動調査を平成25年度に実施することとしたため、同調査費用は平成25年度に使用する。あわせて計画通り報告書刊行を行うため、印刷費用を使用する。
|
Research Products
(1 results)