2011 Fiscal Year Research-status Report
対人関係に及ぼす「感謝」のポジティブ効果に関する拡張・形成理論からの実験的研究
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23530815
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
相川 充 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (10159254)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤枝 静暁 川口短期大学, こども学科, 准教授 (60521515)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 感謝感情 / ウェルビーイング / ソーシャルスキル |
Research Abstract |
平成23年度は3つの研究を行った。1つは、感謝尺度の構成である。従来の感謝尺度は、感謝感情と感謝行動を区別していなかった。しかし、感謝感情の程度と、実際の感謝行動の程度は必ずしも一致していない。感謝感情の程度が低くても、感謝表明は活発に行われることがあり、その逆もあり得る。従って感謝感情と感謝行動は区別すべき別の概念である。この前提にたって、両者を区別して2種類の感謝尺度を作成した。 2つ目の研究は、感謝すべき出来事を数え上げることが、個人のウェルビーイング、対人態度に及ぼす効果を介入研究の手続で検討した。一日の終わりに感謝状況を思い出させる「感謝群」、その日の雑事を思い出させる「煩雑群」、その日の常的な出来事を思い出させる「出来事群」を設定して3週間の介入を行った。従属変数は、ウェルビーイング(「気分」「体調」「運動時間」「アルコール摂取量」「睡眠」「自尊心」「特性感謝」「人生に対する満足度」、「現在の生活の質」「将来の生活の質への期待」)、対人的態度(「手助けに対する反応」「向社会的行動」「他者意識」)、「人生に対する満足尺度の他者評価」であった。これらの従属変数に3群間の違いが認められるであろうという仮説を設定したが、有意な差が認められず、仮説は支持されなかった。 3つ目の研究では、幼児に感謝表明を促すソーシャルスキル・トレーニングを実施し、その効果を検証した。「仲間に入れる」「援助を申し出る」「譲歩する」「感謝を表す」という4つをターゲットスキルとした。その結果、実施前からソーシャルスキルが高いと評定された幼児においてはトレーニング効果が認められたが、低いと評定される幼児においては効果が認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
感謝が個人のウェルビーイングと対人態度に及ぼす効果を検討した研究は、多くの従属変数を設定し大量のデータを収集したにもかかわらず、仮説を支持することができなかった。感謝が「個人のウェルビーイング」と「対人態度」に変化をもたらすことは、申請した本研究の目的である「対人関係への効果」にとっては前提条件である。その前提条件を証明することができなかったため、申請した本研究の目的の達成に対しては「遅れている」と言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
拡張・形成理論の基本に立ち返って、感謝感情が認知を拡張する機能を持つことを実験室実験によって検証する。これが確かめられたあとに、次のステップである形成機能の1つである対人関係への効果を検討する。つまり、拡張・形成理に則って2段階に分けて検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、主に次の3点において使用する計画である。1つは、感謝感情が拡張機能を持つことを検証するための実験室実験の参加者への謝礼。感謝が対人関係に肯定的な効果を及ぼすという形成機能を検証するための質問紙調査または介入研究の参加者への謝礼。2つ目は、小学生に感謝行動を促すソーシャルスキル・トレーニングを実施することで、感謝が友人関係に肯定的効果を及ぼすことを検証するフィールド研究の経費。3つ目は、成果を学会で発表するための経費である。
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