2012 Fiscal Year Research-status Report
対人関係に及ぼす「感謝」のポジティブ効果に関する拡張・形成理論からの実験的研究
Project/Area Number |
23530815
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
相川 充 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (10159254)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤枝 静暁 川口短期大学, その他部局等, 准教授 (60521515)
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Keywords | 感謝感情 / ウェルビーイング / ソーシャルスキル / 特性感謝 |
Research Abstract |
平成24年度は、4つの実証研究を行った。 1つは、小学生に感謝スキルを習得させるソーシャルスキル教育を2校で実施した。いずれの小学校でも、小学生に感謝スキルを習得させることができた。また、感謝スキルを獲得して感謝行動を実行した子どもは、学校での適応感が増えることを実証することができた。 2つめは、特性感謝と人生に対する満足度および向上心に関する研究を行った。これまでの研究で、特性感謝が高い人は人生に対する満足度が高いことが知られているが、向上心との関係は明らかではない。そこで大学生を対象に質問紙調査で検討した。データ分析の結果、向上心との関係を検討するよりも前に、特性感謝尺度の妥当性に関する問題が浮き彫りになり、明確な結論を得ることができなかった。 3つめは、特性感謝が状態感謝に及ぼす効果を検討した。これは、特性感謝と状態感謝を同時に扱う点に意義がある研究である。大学生を対象に質問紙でのビネット法を用いて検討した。その結果、特性感謝は直接、状態感謝を規定するのではなく、状況に対する認知を媒介にして規定していることが確認できた。 4つめは、感謝表明に関する研究を行った。感謝を表明するときに我々は「ありがとう」と言う感謝型と「すみません」と言う謝罪型の両方を使っている。感謝型と謝罪型の使い分けを規定する個人特性について大学生を対象に質問紙調査で検討した。その結果、どちらの型を選択するかは、個人特性よりも状況要因の方が強いことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小学生に感謝スキルを習得させるソーシャルスキル教育の効果が確認できたこと、特性感謝の性質を明らかにできたこと、個人特性が感謝表明の違いに及ぼす影響を検討できたことなどの理由に依り、また、研究成果を4つの学会で発表できたことに依り、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、小学生に感謝スキルを習得させるソーシャルスキル教育の具体的な方法をプログラムとしてまとめる。 第2に、特性感謝の性質を明らかにする為に、エピソード法によって状態感謝に及ぼす効果を検討すること、および特性感謝の高い人の認知的特徴を検討することを行う。 特に上記の第2の検討については、慎重な研究計画のもとに進めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の主な使用目的は、小学生に感謝スキルを習得させるソーシャルスキル教育の具体的な方法をプログラムとしてまとめるための費用、および、特性感謝の性質を明らかにする為に行う2つの調査での費用(回答者への謝礼など)である。 さらに、来年度は最終年度にあたるので、3年間にわたった研究成果をまとめた報告書の作成にも研究費を使う。
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