2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530816
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村本 由紀子 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (00303793)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 達成原因帰属 / 心理的関係性 / 国際比較 |
Research Abstract |
第一に、達成原因帰属における関係性高揚のありようについて、日本人を対象として行われたMuramoto (2003)を国際比較実験研究として再整備し、日本とアメリカで実施した。スタンフォード大学心理学部のHazel Rose Markus教授、同大学院生Alyssa Fu氏に、共同研究者として協力を得た。Muramoto (2003)では、日本人参加者にこれまでの人生における個人的な成功・失敗経験を想起させ、それらについて自ら原因帰属を行ってもらうとともに、周囲のさまざまな他者が当該の成功・失敗についてどのような原因帰属を行うと思うかを推測させた。本研究でもこのデザインを踏襲しつつ、さらにそれぞれの他者と自己との相互理解の程度や、他者による好意的な原因帰属の期待が自らの自尊心に影響を及ぼす程度などを測定する項目を加えて実施した。第二に、周囲のさまざまな他者との心理的関係性の質的な違いを示す構成要素の抽出と、それらに基づく関係性に関する理論モデルの精緻化を目的として、日米比較調査を実施した。具体的には、日米の大学生を対象とし、回答者の周囲にいる代表的な他者(父母、友人、同僚、初対面の他者)との関係を、Muramoto (2004)の尺度の改良版を用いて評定してもらった。個人内相関に基づく多次元尺度法を施し、心理的関係性の質に関する構成要素を確認したところ、文化を超えた共通の関係性次元が確認された一方で、それぞれの他者との関係性の様態には文化差も見出された。さらに、こうして得られた関係性の諸変数が、同時に実施した対人認知や選択に関する日米比較実験で見出された文化差の媒介要因として機能している可能性について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、従来の比較文化心理学研究において明らかにされてきた欧米人と東アジア人の心理・行動傾向の文化差について、関係性の視点から統合的に説明することを目的として行われている。具体的には、(1)さまざまな心理プロセスに関して見出される文化差の背景には、それぞれの社会において優勢な関係性の違いがあること; (2)関係性が異なれば、日本人であれアメリカ人であれ、それに応じて異なる心理プロセスを生起させる、という点を明らかにすることを目指している。現在までのところ、その第一段階として重要な、関係性の構成要素抽出のための日米比較調査が順調に推移し、一定の成果が得られていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の国際比較調査において見出された心理的関係性の構成要素について、その妥当性を、新たなサンプルを用いた調査によって確認していく。また、関係性に応じた拡張自己評価維持メカニズムを検証するための実験室実験について、実験デザインを精緻化し、平成24年度中にパイロット実験を実施する。さらに、量的データでは捉えきれない関係性の質的側面を掘り下げることも重要であると考えられるため、申請者が別途従事しているフィールドワーク・プロジェクトとの連携も強化したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アメリカ側の研究協力者との研究打ち合わせのための海外出張旅費、さらには国内外での学会における成果発表等のための出張旅費が必要となる見込み。また、実験室実験のセットアップに必要なコンピュータ関連機器、データ分析のための統計ソフトの購入等も予定している。
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