2011 Fiscal Year Research-status Report
他者の多様性への寛容:児童と青年における発達的意味と教育の可能性の検討
Project/Area Number |
23530823
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
長谷川 真里 横浜市立大学, 都市社会文化研究科, 准教授 (10376973)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 寛容 / 道徳性 / 仲間関係 |
Research Abstract |
本研究の目的は、児童と青年に置ける他者の多様性を受容する態度、つまり「寛容(tolerance)」の発達について、自分と異なる信念を持つ他者に対する態度から検討するものである。今年度は、2つの予備的な調査を行った。第1の研究では、認知と感情がどのように寛容性にかかわるのかという基準の抽出を試みた。6名の大学生が、先行研究で使用された50の「意見」に対して、どの意見に対し「許容できない」と感じるかどうかについて評定し、および各意見に対し感情や道徳・慣習の概念化などについて評定した。また、実際にどのような基準で「許容できるか否か」を判断したのかについてインタビューした。予想通り、感情と道徳・慣習概念化の基準の報告があったが、それ以外に判断者本人への影響可能性の見積もりも許容の判断において利用されることが示唆された。本調査で使用する場面設定において考慮すべき要因が抽出された。第2の研究は、人間発達における寛容の意味の追求である。まず、大学生を対象に、異質な他者を受け入れるという経験とそれにともなう認識についての自由記述を求めた。この分析は、途中段階であるが、異質性に出会い、それを受け入れることについての肯定的な影響が示唆されている。次に、2つの大学において、寛容性を測定する尺度、主観的幸福感、友人ネットワークの形成についての質問紙調査を実施した。寛容性の高さと幸福感、友人ネットワーク形成に相関が見られ、寛容性と心理的健康との関連が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査研究の開始が10月以降になり、本年度収集できたデータは少ないが、本年度行った文献調査と予備調査によって次年度以降の本調査実施に備えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
大学生を対象に、認知と感情がどのように寛容性にかかわるのかを検討する。ここで認知とは、当該問題を道徳的問題として概念化しているかどうかに絞って検討する。また、感情とは、当該問題に対して、どのような感情をどの程度いだくのか、ということとする。「是非について議論のある問題(たとえば、中絶、出生前診断、死刑など)」について、大学生に対し独立変数を道徳的概念化と感情、従属変数を態度とした回帰分析を行い、認知と感情のいずれが寛容性にかかわるのか、あるいは、認知と感情の交互作用がみられるのかを検討する。 続いて、児童期・青年期の子どもにおいて、異質な他者に対する寛容性がどのような心理的な意味を持つのかを探る。児童期後期以降、閉鎖的な集団を通して、自我を確立していくことが示唆されているので、寛容であることがその時期の子どもにとって必ずしも適応的ではないことを前提としたうえで、対人関係、心理的健康、自我発達との関連を探る。小学生、中学生用のモラルジレンマ課題材料とした「異質な意見」に対する寛容性判断を求める。それらの判断が、子どもの対人関係(子ども自身の評定による教室内での交友関係)、心理的健康(児童・青年版QOL尺度)、自我発達(自我同一性尺度)とどのように関連するのかを探り、異質性の受け入れと心理的健康との関連を推察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず、知見の学会報告を予定している。論文化の前に、研究者からの示唆を受け、本研究の発展につなげたい。また、実験計画や分析に必要な消耗品も一定程度の購入が必要となる。
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