2013 Fiscal Year Annual Research Report
他者の多様性への寛容:児童と青年における発達的意味と教育の可能性の検討
Project/Area Number |
23530823
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
長谷川 真里 横浜市立大学, 都市社会文化研究科, 教授 (10376973)
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Keywords | 寛容 / 仲間関係 / 集団排除 / 道徳判断 / 社会的領域理論 |
Research Abstract |
本年度は2つの研究を行った。第1に、大学生を対象にパネル調査を実施し、寛容が社会的・心理的意義に与える影響について検討した。具体的には、寛容のメリットとして互恵的なネットワークの構築(社会的な側面)と生活充実度(心理的な側面)の2つを取り上げた。その結果、「意見の異なる他者に対する寛容性」の得点が高いことが3ヶ月後の友人の増加に影響していた。このように,有意な影響関係がみられたのは一部の変数のみであったが,他の変数の影響を除去してもなお意見の異なる他者に対する寛容性が対人ネットワークの拡大に影響していた。寛容性は生活充実度には影響がなかった。第2に、幼児と児童の寛容性の発達を相対主義の理解(様々な信念が存在し,必ずしも正しい答えは一つではないということもあることの理解)との関連から調べた。なおこれは、昨年度の研究に対象年齢を拡大して実験協力者を追加し再分析したものである。提示される異論(本人と意見が異なる信念)は「道徳」、「事実」、「曖昧な事実」、「好み」の4領域とし、本人の考えと同じ子ども(A)、逆の考えの子ども(B)の2種を提示し、「どちらの考えが正しいか,両方の考えが正しいか(相対主義の理解)」、「A,Bそれぞれが(実験協力の子どもに)遊ぼうと言ったらどう思うか(寛容性)」を尋ねた。その結果、幼児においても課題によっては相対主義の理解がみられた。また、どの年齢群も、領域を考慮して判断していたが、寛容性判断において加齢とともに道徳領域が分化していった。続く研究では、子どもにとってあまり魅力的ではない食べ物(野菜)を材料にした実験を行った。その結果、「野菜」課題において相対主義理解の割合が増加した。
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