2012 Fiscal Year Research-status Report
文化的課題としての察し―対人知覚の文化的スクリプトの検証
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23530827
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
唐澤 真弓 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (60255940)
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Keywords | 文化 / 国際研究者交流 / ベルギー / アメリカ合衆国 / 察し / 対人知覚 / 文化的自己観 |
Research Abstract |
他者の心的状態を推測することはいかなる文化にも存在する。本研究では、「察し」とは、文化的自己観を用いて対人知覚をする傾向のことであると考え、人の気持ちを察する傾向を測定し、この傾向が高いほど文化固有の人間関係のモデルを用いがちであるという仮説を検討する 研究1.察し機能尺度の作成:他者の心的状態の理解という察しを測る尺度を作成するために、他者理解の基盤となる心の理論尺度(Yoon, et al, 2010など)、他者の心を読む能力としてEmotional Intelligence(Salovey & Myer,1990)尺度,思いやり尺度を日本人大学生120名に実施した。それぞれの尺度の妥当性が確認された。これらを英訳し、また既存の文化的自己観尺度(Interdependence vs Independence scale, Singels)を加え、察し機能得点と文化的自己観とを比較する質問紙を完成させた。また、日本における文化的課題としての「察し」能力との弁別を検討した。 研究2.察し機能による対人理解の文化差の実験の準備、予備実験 察し機能を測るための対応バイアスの実験について、予備実験を行ったところ、NaらがPC上で作成した対応バイアス実験結果が日米で追試できなかった。そのため、新たに2つの課題を策定した。昨年度予備調査を実施した、文化的対人感情知覚課題であるMesquita& Masudaの実験をベルギールーベン大学大学生80名に実施した。日本でも予備調査を実施し、文化的自己観尺度と併用した本実験の準備を整えた。また、対人理解課題に関して、Odd Bowl課題を参考に新たな実験を作成した。自己と他者への注意の向き方を調べるものである。ミシガン大学と英語と日本語で開発し、ベルギーでの予備調査を経て本実験の準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、下記の2つの仮説を検証することを目的としている。 研究1「察し機能尺度の作成」については、3つの文化における質問紙尺度が完成したが、今年度中にすべての文化での調査を終えることができなかった。質問紙の等価性および妥当性の確認に時間をとったためである。 研究2 察し機能による対人理解の文化差の実験課題については、1つの実験で先行研究を追試できなかったため、新たな実験課題を作成することとなり、予定より実験実施が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究1については、次年度はじめに、文化的自己観を加えた本調査を実施する予定となっている。文化間での等価性の検証に時間を要したため、当初の計画より実施が遅れることになったが、実施から分析まで十分に修了することができると判断している。また、研究2については、実験課題の同定に時間を要したため、実験実施が遅れているが、次年度に迅速に実験を実施する準備は万全である。本学およびミシガン大学での研究倫理審査申請についても準備を進めている。準備に時間を要したのは、文化比較の同等性と、研究成果の再現性のために、必要なプロセスであると考え、結果的に最適な方法でのデータ収集が可能となったと考えている
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験課題の作成と実施に、謝金を使用する。また、課題調整のための渡米旅費を計上する予定である。その上で、研究成果のまとめ、データ入力および分析のための謝金を使用し、今年度の研究報告を作成する予定である
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Research Products
(2 results)