2012 Fiscal Year Research-status Report
討論型世論調査による一般市民の裁判員制度の理解と支持に関する研究
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23530828
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
黒澤 香 東洋大学, 社会学部, 教授 (90205237)
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Keywords | 討論型世論調査 / 裁判員制度 / 陪審制度 / 世論調査 |
Research Abstract |
リアルタイム評価支援システムを使い、担当科目1から33名、担当科目2から30名の参加があった。その調査のため、実験1(裁判1)の材料を使った場合(科目1の受講生を対象に)、1/3(11名)が無罪を主張し、実験2の場合(科目2の受講生)、13/30が無罪とした。実際の裁判では、実験2(科目2のもの)が無罪(控訴審では逆転有罪、最高裁でさらに逆転して無罪。裁判員裁判で最初に無罪になった事件である)になったわけである(もうひとつのものは最初から有罪)。実験1(有罪のもの)を使った場合、証拠は16人が不十分/やや不十分を選択し、実験2(無罪)の場合は15名が同じ選択をしている。これは実験の感想のため、実際の裁判でどのような判断が行われたか、分からない。この2つの裁判は、判決が同じ週に出されたが、予想通り、実験では有罪・無罪の違いがはっきりと出なかった。実際の裁判で違いがあったのは、被告人の国籍のため(無罪は日本人、有罪はアフリカの黒人)の差別とも考えられる。ただ、あまり差が出なかったのは、予想どおりで、これでよいと思われる。また、研究者招聘を行った。具体的には、1月20日から26日にかけて、ペンシルバニア州立大学の研究者(夫妻)を呼んで、講演をお願いした。24日には千葉大学法経学部でより基本的な内容で、25日に本学のスカイホールにてより研究課題にそった形で、それぞれ30~40名の参加を得て、開催した。参加者が思ったより多く、また関心が高かったので、安心した次第である。内容は科研費の目的と合致していた(アメリカの陪審制度や、それに参加すると投票率があがるなど)が、あらためて、わが国における裁判に関する認識と参加意識に関して、考えることが多かった。その後、引き続き、参加者を一般社会から募って、実験を行いたいと考えていたが、年度の終りになって、進んでいない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的は、討論型世論調査をすることで、残った時間で統制のための普通の調査を行い、また研究者を呼ぶことである。研究者を呼ぶのは、順調に進んでおり、今年12月に第2の研究者を呼ぶことが内定している。(第1年度は研究代表者が大韓民国を訪問して、国際法社会学会分会で学会発表を行った。)討論型世論調査は、裁判のかたちを予定し、調査用紙の内容はだいたいできている。実際の実施は現在、準備中であり、あまり問題なく実施できると考えている。また、比較統制のための調査実験(対面型)は、かかる費用の面など、未定の事が多いので、実施したいのであるが、実施できるか、どのくらい調査ができるのか、現在のところ、不明の点が多い。しかし、実施するのは、ほとんど間違いのないことである。これらの点は、多少、遅れてはいるものの、大体、予定どおりである。
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Strategy for Future Research Activity |
今年の予定は次のように考えている。 1.事例を2つ考えたが、裁判の材料を使って、インターネットで調査(実験)を実施したい。これを前期の終わりまでに行っていく。 2.同じ材料を使って、対面型の議論を行いたい。これは、前期の終わりから後期の初めにかけて、データを収集したいと考えている。 3.研究者招聘を今年の終わりにかけて行う予定である。目的の学者に接触している段階だが、おおむね、肯定的な反応を得ている。 4.ホームページを作成する予定である。これは第1年度に契約をしたが、その後、進んでいない。なるべく早く終わらせたいと考えている。 そして、平成25年度が最終年度なので、良い結果を出して、出版したい。そのためにも、研究をがんばっていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費の使用については、次のように考えている。 1.インターネットで調査を行いたい。昨年度に実施しようとしたが、準備の都合で間に合わなかった。このため、まとめて2年度分の実験を行いたい。予算として、約80万円を考えている。これは、インターネットにアクセスするアシスタントの費用を含んでいる(アシスタントの費用を約1/4とする)。 2.また、対面型の実験であるが、私の担当科目1と担当科目2などで実験参加者を募っていきたい。ただし対面型であるので、これも実験者としてアシスタントが必要で、約半分がその費用である。全額で約40万円がかかるものと思われる。 3、研究者招聘であるが、全額で35万円かかる予定である。 4.ホームページの作成に31万円の予算を見込んでいる。 以上の合計で、186万円ほどになる。インターネットの実験は資金がかかるが、できるだけ多くの実験参加者を募っていきたいと思っている。
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