2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530831
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
岡本 真一郎 愛知学院大学, 心身科学部, 教授 (80191956)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 肇子 慶應義塾大学, 商学部, 教授 (70214830)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ミス・コミュニケーション / 社会心理学 / 語用論 / リスク・コミュニケーション / クライシス / 推論 / 透明性錯覚 |
Research Abstract |
まず,ミス・コミュニケーションおよび透明性錯覚の言語学,心理学の先行研究の整理を行った.岡本は広告における誤誘導がどのような形態を取るのか,内外の具体的な事例をとりあげ,実験的研究も踏まえて検討し,それに対してどのような対策が講ぜられる必要があるかを論じた.吉川は,リスク伝達におけるミス・コミュニケーションが生ずる社会的問題に重点を置いて検討した.岡本は,ミス・コミュニケーションに関する実験の準備として,誤解に関する実態調査を行い,それらを分類した.聞き間違え(特に固有名詞),指示対象の取り違え,意味の取り違え,そして推意の誤解など,種々の誤解が存在することが明らかになった.岡本と吉川は東日本大震災において行政機関や東京電力が発表した状況説明や謝罪などのコメントの言語的な特徴を検討した.そしてそこで現実に用いられた言語表現を素材にして,表現形式が伝達内容や伝え手の印象に対してどのような影響をもたらすかに関して,インターネットを用いた調査を行った.この調査では推意の影響や伝え手の関与権限に関わる表現の影響を検討するため,一部,独立変数を操作した実験の形式を取っている.また,受け手の性,年齢,職業のような属性のほか,環境保護やマスコミに対する態度の影響も検討することを試みた.伝え手が意図しないさまざまな推測が生ずることが明らかになった.参加者の社会的態度はこうした推論に影響するが,それには性差も認められた.また,吉川はリスクの言語的な表現の受け取られ方が,影響を受ける範囲(個人-社会)と誘意性(ポジティブーネガティブ)によって異なるかについて,調査を行った.結果の詳細は分析中であるが,同じ言語的表現であっても受け取られ方が異なることが明らかになった.こうしたミス・コミュニケーションには透明性錯覚が介在していることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究の整理,実証的研究の準備のための報道資料などの整理は予定通り進行している.とくに,広告やリスクにおけるミス・コミュニケーションに関して,過去の研究を展望してさまざまな角度から論ずることができた.また,ミス・コミュニケーションの予備調査も小規模ではあるが実施することができた.これについては既に分析を終了した.さらに,言語表現がもたらす印象に関してのインターネット調査も調査も一部実施できた(ただし,詳細な解析は今年度実施する必要がある).以上の中には,今後の調査に資するような新たな問題の発見もあり,今年度以降の研究の進行のための土台を築くことができたと考えている.ただし,透明性錯覚の詳細な検討に関しては,実験計画の段階にとどまっている.この点は今年度以降の課題と言える.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23度の研究に引き続いて,ミス・コミュニケーションに関して理論的,実践的両側面から研究を進めていく.理論的には,ミス・コミュニケーションの発生と持続に関するさまざまな要因を明らかにすることを大きな目的とする.これは当然,ミス・コミュニケーションを回避したり低減したりするための手立てを考える手段となる.その際,透明性錯覚の問題との関わりを詳細に検討することが対象となる.実践面では,リスク・コミュニケーション,クライシス・コミュニケーションにおけるミス・コミュニケーション,そこに介在する透明性錯覚について実態を明らかにしていく.これらの問題の解明のために,とくに言語表現の役割を検討していくことになるが,研究方法としては,調査,実験のほか新聞記事やインターネットへの記載の分析などを通じて,できるだけ幅広い角度から検討を行っていく予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に関しては,研究費の具体的使途として以下を予定している.1.ミス・コミュニケーション関連する文献を収集して先行研究と本研究との関わりを整理し,問題をさらに課題を明らかにしていくために,内外の書籍を購入する必要があり,そのための経費の一部を充てる.2.ミス・コミュニケーションと透明性錯覚に関する基礎的研究,リスク等のコミュニケーションにおけるミス・コミュニケーションの応用的な問題について,実験・調査研究を実施(具体的には小規模の質問紙実験のほか,インターネットを使用した実験や調査)するために経費の一部を充てる.3.上記の実験,調査の結果の解析ための統計プログラムの準備等のために,経費の一部を充てる.4.研究代表者と研究分担者の打ち合わせのための旅費に経費の一部を充てる.5.調査の準備や解析の補助者に対する謝金に経費の一部を充てる.6.資料整理や発表のための消耗品の購入に経費の一部を当てる.
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Research Products
(7 results)