2011 Fiscal Year Research-status Report
痩身モデルが痩身願望におよぼす社会心理学的影響―社会的比較理論の導入―
Project/Area Number |
23530834
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
諸井 克英 同志社女子大学, 生活科学部, 教授 (80182286)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 痩身願望 / 社会的比較 / 痩身理想像 |
Research Abstract |
申請研究の主目的である社会的比較と痩身願望,メディアに登場する痩身モデルとの比較,同性同輩との比較,および痩身理想像内在化の間の関係が検討された。これらを測定するための諸測度が女子大学生に実施された (N=247)。諸測度間の関係パターンを検討するために,共分散構造分析 (Amos7.0)が用いられた。痩身願望は,メデイアに登場する女性モデルよりも同性同輩との比較によって影響されていた。また,この関係は,痩身理想像内在化によって仲介されていた。本研究の意義が,社会的比較理論の観点から論議された。さらに,続く研究では,女子大学生を対象として(N=260),身近な同性他者として同性親友,母親,同性きょうだいとの体型比較も行わせ,痩身願望に対する影響を検討した。「同性同輩との比較→痩身理想像内在化→痩身願望」の影響経路は再び得られ,身近な他者との比較の相対的影響については,現在解析中である。 痩身願望の問題を身体の装いに関する意識・行動の観点から扱い,次の質問紙調査を実施した。女子大学生が抱く化粧リスク懸念を測定するための尺度が作成された。先行研究に基づき作成された38項目から成る化粧リスク懸念尺度が他の尺度ともに女子大学生に実施された (N=253)。主成分分析により,5主成分(「自己顕示懸念」,「品質・性能懸念」,「化粧規範からの逸脱懸念」,「流行性懸念」)が抽出された。これらの主成分は,化粧意識(平松・牛田, 2004) や女性ファッション誌接触傾向(諸井・花高・尾鳥, 2010)と有意な関係を示した。化粧リスク懸念研究の意義が論議された。この研究知見を基にして,化粧リスク懸念と他の個人的傾性(独自性欲求,セルフ・モニタリング傾向,対異性不安)を検討した。現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「おおむね順調にしている」と判断した理由は以下の通りである。 (1)女子大学生を対象とした質問紙調査で,「同性同輩との比較→痩身理想像内在化→痩身願望」の影響経路が得られ,さらに続く調査でも同様の影響経路が抽出された。つまり,痩身願望を支える基本システムが同定された。 (2)痩身願望の問題を身体の装いに関する意識・行動の観点から扱った化粧リスク懸念に関する質問紙調査においても,化粧という仕方で身体=顔を装うことの心理的意味に関する知見が得られた。 (3)身体に関する文献を収集し,痩身願望の問題を総合的に捉える観点の整理ができた。 以上のことから,申請研究はほぼ順調に進展していると判断できよう。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)痩身願望と社会的比較を軸にした質問紙調査では,身体部位の比較と満足感の測定を導入する。つまり,1年目の研究では,体型に関する全体的比較をさせたが,今年度では身体部位を細かく設定し,どのような部位の比較が痩身願望に結びついているかを明らかにする。(2)化粧リスク懸念の研究についても,化粧行動に関する詳細な測定を試みる。つまり,全体としての顔の装いよりも,顔の各部位に対してどのような装いをしているかを測定し,化粧リスク懸念との関連を調べる。(3)1年目で試みた質問紙アプローチとは別に,写真を利用した比較の導入を試みる。例えば,個人自己写真を見ている場合と,親友との2人写真を見ている場合などを設定し,同性親友との比較と痩身願望との関係を検討する。(4)文献研究の継続も行う。とりわけ,広告などで身体や痩身性がどのように扱われているかもフォローする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「今後の研究の推進方策」に従い,以下のような使用計画を立てた。(1)痩身願望や身体に関する問題を扱った文献を収集し,考察するために関連文献の購入が必要である。(2)質問紙研究を継続して行うために,PC関連用品,PCソフト,質問紙作成のための用紙代,データ解析補助者謝金などが必要である。(3)写真を利用した比較の導入のために,関連機器やプリント代が必要となる。(4)学会・研究に出席するための旅費等が必要となる。
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