2012 Fiscal Year Research-status Report
痩身モデルが痩身願望におよぼす社会心理学的影響―社会的比較理論の導入―
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23530834
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
諸井 克英 同志社女子大学, 生活科学部, 教授 (80182286)
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Keywords | 痩身願望 / 社会的比較 / 痩身理想像 |
Research Abstract |
先行研究(守安・諸井, 2012; 2013)まででの研究で扱った体型比較測定における「体型」という用語は,身体の全体的な印象を指しているのか特定の部位を示しているのか曖昧であった。つまり,測定のための質問項目では,身体全体での比較が意図したが,回答者側は実際には特定の部位での比較を行っている可能性が考えられた。そのため,今回の研究では,このことを確認するため,同志社女子大学学生を対象とした質問紙調査が実施された(N=190, 平均年齢19.91歳)。質問紙調査のために,身体の詳細な部位を比較する尺度が新たに作成され,同時に身体の部位ごとの満足感も測定された。 主成分分析および重回帰分析によって,同性同輩との体型比較で回答者が実際に想定していたのは身体の全体的な印象ではなく身体の特定の部位だったことが明らかになった。ただし,痩身願望に関する重回帰分析では身体の全体的な印象も影響していた。したがって,身体の詳細な部位ごとに対同性同輩比較を行わせたことに一定の意義が認められたが,どのような特定部位が体型比較に強く関わるのかや,全体的な体型比較と痩身願望の関係における差異などの問題点が残された。また,「同性同輩比較⇒痩身理想像内在化⇒痩身願望」という前研究でも見られた影響経路が本研究でも得られた。 先行研究と本研究を通して痩身願望の心理学的メカニズム解明に寄与する有益な諸知見が得られた。しかしながら,種々の問題点も指摘され,これらの問題点を今後も引き続き検討すべきといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「おおむね順調に進展している」と判断した理由は以下の通りである。 ①今回の質問紙調査でも,「同性同輩との体型比較⇒痩身理想像内在化⇒痩身願望」の影響経路を堅守することができ,痩身願望を支える基本システムが再度同定された。 ②今回試みた身体部位ごとの体型比較によって,回答者にとっての「体型」の意味が必ずしも身体全体を指すのではなく,特定の部位比較を意味することが明らかになった。 以上の知見から,「体型」に関する社会的比較の過程について,①で言及=同定されたマクロな過程と,今回の調査で明らかになったミクロな比較過程の両方を加味した痩身願望に関わるモデルの構築の重要性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
①先行研究と今回の研究で示唆された「社会的比較⇒痩身願望」の影響経路に関するマクロな比較過程とミクロな比較過程を力動的に捉える質問紙調査を実施する。 ②身体自体の知覚(痩身性)の問題とともに,身体とりわけ顔の装いである化粧の問題についても再度取り組む。たとえば「小顔」は最近の化粧における重要な「目標」でもあるが,顔部分の痩身性=「小顔」がどのように知覚されるかの過程についても解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「今後の研究の推進方策」に従い,以下のような使用計画を立てた。 ①痩身願望や身体に関する問題を対象とした文献を収集するために,関連文献の購入が必要となる。 ②質問紙研究継続のために,PC関連用品,ソフト,用紙代などに加え,データ解析補助者謝金を必要とする。 ③写真を利用した比較導入のために,関連機器や写真プリント代を必要とする。 ④学会・研究会に出席するための旅費等が必要となる。
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