2011 Fiscal Year Research-status Report
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23530836
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山崎 優子 立命館大学, 立命館グローバルイノベーション研究機構, ポストドクトラルフェロー (20507149)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石崎 千景 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 特任講師 (00435968)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 死刑制度 / 市民 / 世論調査 |
Research Abstract |
平成23年度の研究の目的は,市民が死刑の賛否をどのような観点から捉えているのかを明らかにすることであった。また、前年度までの研究成果を精緻化し,市民がどのような観点から死刑の賛否を判断するのかについてあらためて精査する研究計画をたてた。計画にそって、実施した研究の成果は以下の通りである。 <研究1: 質問紙法による調査> 参加者: 大学学部授業の受講生276人、アルバイト募集に応じた大学生153人。手続き: 死刑の賛否およびそう判断する理由について回答を求めた(自由記述)。<研究2: ディベートによるデータ収集> 参加者: 研究1の市民153人のうち59人。死刑の賛否が偏らないように、5人~6人を無作為に1群に割り当てた。手続き: 各群で、死刑の賛否についてディベートを行った。<研究3:研究1、研究2から得られた判断理由の集約> 研究1、研究2から得られた死刑賛否の判断理由に対してKJ法(川喜田、1967)を行い、情報を集約した。その結果、2009年に実施された内閣府の調査で示された死刑賛否の理由以外で、10%以上の参加者が死刑賛否の判断理由として取り上げた3項目、「刑を希望して犯罪を犯す場合がある」、「死刑制度は抑止力をもたない」、「死刑の執行側や判断側の負担(ex.精神的、時間的、金銭的etc.)」を抽出することができた。また、2009年に内閣府が実施した調査で、死刑賛否の理由として取りあげられた13項目が、必ずしも主要な死刑賛否の理由とはならないことが示された。13項目のうち2項目「漠然と死刑に嫌悪感を感じる」、「加害者にも家族がいる」にいたっては、死刑賛否の判断理由として取りあげた参加者は1%に満たなかった。 本研究の結果、先行研究で示された市民の死刑の判断理由が必ずしも主要なものではないこと、先行研究で示された以外にも複数の理由の存在が示されたことは重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究目的は,市民が死刑の賛否をどのような観点から捉えているのかを明らかにすることであり、質問紙法による調査と集団実験(死刑賛否に関するディベート)をそれぞれ行い、市民が死刑の賛否に至った理由を複数抽出する研究計画をたてた。 平成23年度は、当初の計画通り、<研究1: 質問紙法による調査>、<研究2: ディベートによるデータ収集>、<研究3:研究1、研究2から得られた判断理由の集約>を実施した。すなわち、質問紙法による調査と集団実験を行い、得られた死刑の賛否についての複数の理由をKJ法によって集約した。その結果、2009年に実施された内閣府の調査で、死刑賛否の理由としてあげられた13項目以外に3項目を抽出することができた。 2009年度に内閣府が実施した調査で、死刑賛否の理由として取りあげられた13項目が、必ずしも主要な死刑賛否の判断理由とはならないこと、市民の死刑賛否の判断がより複数の観点からなされていることが示された。 平成23年度の研究の目的は、おおむね達成したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究計画、<研究1>~<研究4>のうち、<研究4:死刑の賛否に影響を及ぼす要因の抽出>(研究1~3の実施によって、集約された判断理由を研究1~3とは別の参加者80名に提示し、各項目に対してどの程度賛成できるかを7件法で尋ねる。得られたデータに対して因子分析を行い、死刑の賛否に影響を及ぼす要因の抽出を行う)については、必要な参加者数を確保できなかったため、平成24年5月に実施する。平成23年度の未使用研究費69,200円は、平成24年5月に実施する<研究4>の調査参加者への謝金として使用する。 平成24年度の研究目的は、「死刑に対する態度に影響するとされる諸要因を、個人の特性に由来する要因と社会的な要因とに分類する。その上で、死刑の賛否にいたる心的な過程のモデル化を試みる」ことである。 平成24年度の研究では、<研究4>に加え、<研究5>および<研究6>を実施する。<研究5>、<研究6>の具体的内容は以下のとおりである。 <研究5:死刑に対する態度に影響する要因のカテゴリ分類> 先行研究で死刑に対する態度に影響する可能性が指摘されている諸要因について、市民の個人特性に関する要因(内的要因)と、個人特性には属さない要因(社会的要因)とにカテゴリ分類する。たとえば、権威主義傾向は内的要因であり、体感治安は社会的要因として分類される。 <研究6:モデルの構築> はじめに(1)死刑の賛否を尋ねる項目、(2)研究4で得られた項目(死刑の賛否の判断理由)、(3)研究5で得られた内的要因と社会的要因を測定する項目(先行研究で用いられた、権威主義傾向や体感治安を測る質問項目)から成る質問紙を作成する。次に、この質問紙を用いて質問紙調査を行い、成人男女200人から回答を求める。最後に、得られた回答に対して共分散構造分析を行い、死刑の賛否にいたる心的な過程をモデルとして表す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費(869,200円)の使用計画は以下のとおりです。 [国内旅費] 290(千円)((1)学会参加 130(千円) 〇日本心理学会(9月11日、12日、13日に開催) 1人×70(千円) 〇法と心理学会(10月20日、21日) 1人×60(千円) (2)研究会参加 100(千円) ○ 東京 (1泊2日×2回) 1人×2回×50(千円)) [謝金等] 504(千円)((1)実験参加者への謝金 464(千円)○80人×0.80(千円) ○200人×@2(千円) (2)実験補助者への謝金 40(千円)○ 2人×20時間×@1(千円)) [消耗品費] 75.2(千円)((1)図書・雑誌 30(千円)(2)記録メディア(DVD-R,DVD-RAM等)10(千円)(3)ハードディスク(1台×@15)15(千円)(4)印刷費 20.2(千円))
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