2012 Fiscal Year Research-status Report
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23530836
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山崎 優子 立命館大学, 立命館グル―バル・イノベーション研究機構, 研究員 (20507149)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石崎 千景 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 特任講師 (00435968)
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Keywords | 司法判断 / 死刑 / 裁判員 |
Research Abstract |
24年度の研究では、市民(大学生)122人を対象とする研究1と市民(大学生)86人を対象とする研究2を実施した。研究1では、23年度の研究および先行研究で、市民の死刑賛否に影響する可能性が示された性格特性(たとえば、他者に対する攻撃性、権威主義傾向)、死刑制度に対する認識等を問う質問紙調査を行った。研究2では、性格特性、死刑賛否に影響する可能性のある情報(たとえば、無期懲役囚の出所年数)の知識および死刑賛否への影響の程度を問う質問紙調査に加え、裁判員裁判で死刑判決が下された事案の概要を示して量刑判断を求める模擬裁判実験を実施した。 研究1の結果、死刑賛否に影響を及ぼす要因として、3つの因子の存在が示された。第1~第3因子をそれぞれ「博愛主義」因子、「厳罰主義」因子、「死刑執行による被害回避」因子と命名した。権威主義傾向が強い者ほど「博愛主義」因子の影響を弱く受け、「厳罰主義」因子の影響を強く受けることが示された。 研究2の結果、死刑賛否に影響を及ぼす要因として、3つの因子の存在が示された。第1~第3因子をそれぞれ「被害回避」因子、「市民の心的負担」因子、「加害者側の心的負担」因子と命名した。また、模擬裁判実験の結果から、量刑判断に影響を及ぼす要因として、3つの因子の存在が示された。第1~第3因子をそれぞれ「被告人が存在することの危険性」因子、「被告人に対する同情」因子、「判決に影響する間接的事象」因子と命名した。模擬裁判実験での量刑判断に影響を及ぼすことが示された3つの因子は、死刑賛否にも影響を及ぼすが、死刑賛否に影響を及ぼすことが示された3つの因子は、量刑判断に影響を及ぼさないことが示された。 裁判での死刑判断に至る心的モデルは、死刑賛否の判断に至る心的モデルとは、必ずしも一致しないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度の研究計画は、市民200人を対象とする調査/実験を実施し、死刑の賛否に影響する諸要因を、個人の特性に由来する要因と社会的な要因とに分類すること、死刑の賛否にいたる心的な過程のモデル化を試みることにあった。 24年度の研究は、上記の研究計画を概ね達成できたと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、下記の研究を実施する計画である。 研究1:社会的な要因に関連する正確な知識の教示 200人の参加者を対象として、はじめに、体感治安や刑罰の適用のされ方といった、社会的要因と関連する事柄について、回答を求める。これにより、参加者がどの程度正確な知識を有しているのかを確認する。その後、はじめに質問を行った項目についての正確な情報を、参加者に対して教示し、その効果を明らかにする。 研究2:社会的要因に関連する知識の正確性と死刑賛否との関連 研究1で知識の教示を行った参加者に対し、死刑賛否に至る心的モデルの構築を行う。本研究で得られたモデルと24年度で得られたモデルとを比較検討することで、社会的要因に対する認知の歪みが、死刑の捉え方をどのように歪めているかを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度は、国際学会に参加する予定であったが、予定があわず、参加を断念した。 25年度は、 Budapestで開催されるthe 18th Conference of the European Society for Cognitive Psychology でポスター発表を行う予定である。国際学会参加費用の他に、国際学会誌への投稿論文の校正費用に使用する予定である。
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