2012 Fiscal Year Research-status Report
青年期の愛着スタイルとその形成過程が自己の確立と将来への展望に及ぼす影響
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23530838
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
金政 祐司 追手門学院大学, 心理学部, 准教授 (70388594)
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Keywords | 青年・成人期のアタッチメント / 社会イメージ / 適応性 / 将来への時間的展望 / 就職動機 |
Research Abstract |
平成24年度は、青年・成人期の愛着スタイルならびに特定の相手への愛着の機能が、社会へのイメージや将来への展望に対して及ぼす影響、さらに、それらが主観的幸福感に対して及ぼす影響について検討を行うため、2度の調査を実施した。加えて、現在3度目の調査を実施している状況である。 まず、1度目の調査は、平成24年5月から7月にかけて行われた。昨年度作成を行った社会イメージ尺度を用い、青年期の愛着スタイルが社会へのイメージを媒介して、個人の将来展望や主観的幸福感に対して及ぼす影響について検討することを目的とした調査であった。その結果は、上記の仮定が概ね支持されるものであった。この結果の一部は、日本社会心理学会第53回大会、日本発達心理学会第24回大会において報告された。 次の調査は、平成24年10月にリサーチ会社を通して行った。先の調査が大学生のみを対象としていたことから、社会人(学生ではなく、パート・アルバイトを含む有職者)を対象として調査を実施した。この調査の主な目的は、大学生と社会人では社会へのイメージが異なるのか、また、上記の調査で示された青年期の愛着スタイルが社会へのイメージを媒介して個人の将来展望や主観的幸福感に対して及ぼす影響に関するモデルが、社会人を対象とした調査でも再現されるのかについて検討することであった。この調査に関しては、現在分析中であり、今後、それらをまとめて、学会などで発表していく予定である。 現在実施中の3つめの調査は、学童期までの親子関係についての認知や現在の特定の相手への愛着の機能、さらに、青年期の愛着スタイルが、社会へのイメージならびに探索行動に対して及ぼす影響を検討することである。 また、以前に行っていた調査結果をまとめたものが「自己目的化尺度の作成とその検証-自尊心、自己愛、友人からの印象との関連から-」として対人社会心理学研究に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、本年度2度の調査を実施する予定であったが、それらの調査を終え、3つめの調査を実施できていることから研究計画は概ね順調に進展しているといえる。平成24年度は、大学生と対象とした調査を1度、社会人を対象とした調査を1度実施しており、また、現在大学生を対象とした調査を実施している。1度目の大学生を対象とした調査ならびに2度目の社会人を対象とした調査の両分析結果において(すなわち、大学生、18歳から24歳までの青年期後期社会人、25歳から29歳までの成人期前期社会人の3群において)、青年期の愛着スタイルが社会へのイメージを媒介して、将来への時間的展望に対して影響を及ぼすという当初の仮定が支持されており、現時点までは研究目的は概ね達成されているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、本申請研究の最終年度に当たるため、まず、これまでに得られた研究結果をまとめ、それらを発表あるいは文字化していくことが大きな目的となる。そのため、昨年度収集したデータに関して入念な分析を行い、そこから抽出された研究結果について、国内外の学会や研究会で発表を行うとともに、それらを論文としてまとめ、学会誌に投稿していく。 さらに、平成25年度は、平成24年度に得られた研究結果を踏まえ、養育経験や青年・成人期の愛着スタイル、特定の相手への愛着の機能が、社会へのイメージや探索行動に対して及ぼす影響、ならびにそれらが個人の適応性に与える影響について検討を行う予定である。調査対象者は、大学生300名から400名程度、質問紙の構成としては、①幼少期の養育経験(母親の養育態度の認知)を測定するための尺度、Parental Bonding Instrument(PBI; Rice & Cummins, 1996, 邦訳は長谷川・浦・田中, 1998)、②青年期の愛着スタイルを測定する尺度、一般的他者版ECR (中尾・加藤, 2004)、③青年期における特定の相手への愛着の機能を測定する尺度、愛着機能尺度(山口, 2009)、④社会イメージ尺度(金政, 2012)、⑤探索行動尺度(Green & Campbell, 2000)、⑥主観的幸福感(伊藤・相良・池田・川浦, 2003)を考えている。本調査においては、ネガティブな愛着スタイルや青年期における愛着対象への愛着機能の低さが、社会に対してネガティブなイメージを形成させ、探索行動を抑制することで、個人の主観的幸福感を低下させるという仮説についての検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本申請研究について、これまで(平成23年度ならびに平成24年度)に行ったいくつかの調査結果を全体的にまとめ、それらを国内外の学会や研究会で発表する予定である。特に、平成24年度に得られた青年期の愛着スタイル、社会イメージ、将来への時間的展望ならびに主観的幸福感の関連性について、大学生、18歳から24歳までの青年期後期社会人、25歳から29歳までの成人期前期社会人の3つの群の共通項と差異に焦点を当て、海外の学会で発表を行う予定である。そのため、国内外の諸学会で学会や研究会に参加するための参加費や旅費等が必要となる。加えて、本申請研究について、これまでに行った調査結果を学会誌に投稿する際の諸費用も必要となる。 平成25年度に実施を予定している調査の実施のために、質問紙を作成する際の諸費用、質問紙の郵送費、迅速な研究施行のために研究資料の整理や収集データの整理を行う研究協力者への謝金等が必要となる。また、調査の実施に際して、愛着理論に関連する書籍や文献、探索行動や動機づけに関連する書籍や文献などが必要となるため、それらの図書費も必要となる。
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