2013 Fiscal Year Research-status Report
家計を中心とした経済リテラシーに関する生涯発達的研究
Project/Area Number |
23530842
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
神谷 哲司 東北大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (60352548)
|
Keywords | 経済(ファイナンシャル)リテラシー / 家計 / 夫婦 / 子育て |
Research Abstract |
昨年度までに明らかとなった,経済リテラシーの複雑さ,困難さを踏まえつつ,家計に特化した経済リテラシーのあり方,ならびに関連する概念を整理することを進めた結果,関連する概念として,ファイナンスに対する態度や行動,ファイナンスに対する自信や効力感,ファイナンスについての満足感や幸福感などの多くの概念が扱われていることが明らかとなった。それらについて,レヴュー論文を執筆し,現在,第1稿がまとめられ,さらなる改稿をし,投稿論文として準備を進めている。 また,先の家計研究のデータを基にした研究を日本発達心理学会第25回大会において発表し,専業主婦家庭における夫の金銭重視の態度が夫婦双方の結婚満足度に関連していることが明らかとされた。このことは,夫婦間の家計収入・管理にかかわる意識の問題が共働きであるか否かによって大きく影響を受けることを示唆するものであると考えられる。 夫婦関係に関する事項としては,これまでの研究の成果の発表として,「育児期夫婦のペア・データによる家庭内役割観タイプの検討:役割観の異同の類型化と夫婦の関係性の視点から」が発達心理学研究に掲載され,夫婦間の関係調整の不備が直接的に夫婦の調和的な関係を壊すのではなく,夫婦間,特に夫から妻に対する共感的なコミュニケーションによって補償する働きがある可能性があることが明らかにされた。このことから,夫婦間の経済リテラシーのペアについて検討する際にも,あわせて夫婦間のコミュニケーションの様相について検討する必要があることが示された。 また,これまでの研究の成果の発表として,The 7th Conference of International Association of Family Psychology.の企画シンポジウム,日本発達心理学会の自主シンポジウムに話題提供者として発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度,すでに遅れ気味であったが,日本ではまだ十分扱われていない概念であるため,概念整理を丁寧に行うことを心掛けた。そのため,リテラシーのみならず,それに関連する態度や行動,自信や効力感,満足感や幸福感といった概念も含めてレヴューを試みたため,予想以上に時間がかかってしまい,かつ,遅延した期間に新たに発表された研究についても追って収集を行ったため,レヴュー論文の執筆ならびに概念の整理に予想以上の時間を要してしまった。さらに,レヴュー論文の第1稿をまとめたものの,論文としての精密性に欠ける面も生じてしまっているため,それらを複数の論稿に再構成する必要も生じ,概念と項目の整理に時間がかかってしまっている。これらの状況のため,予備調査にまでたどり着けなかったことが遅れている理由として挙げられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度の指摘を踏まえ,経済リテラシーに関連する概念にまで広げて概念整理を行ったため,レヴュー論文をまとめるのに時間を要してしまった。ただし,全体像を踏まえて,第1稿まであがっているので,それを整理することでレヴュー論文を投稿するとともに,その論稿で提示された経済リテラシー(この論稿移行「ファイナンシャル・リテラシー」と表記する)の尺度として必要な要件を踏まえた項目を精選し,尺度を開発し,予備調査,ならびに本調査の企画,実施を進める。その際参考となる海外の尺度候補は3つほど明らかになっている。さらに,得られた結果については,国内外の諸学会において発表することで,年度内での研究計画の推進は可能となるであろう。具体的には,予備調査6月,本調査11月を予定している。この予備調査,本調査の実施にかかる費用が翌年度に持ち越されている。 予備調査,本調査には調査会社に委託することにより,広く成人を対象とする。また,経済リテラシーについて国内ではほとんど研究が見られないため,海外の国際学会に参加し情報を収集することも計画したい。また,必要に応じて,夫婦関係のシンポジウムなどを国内諸学会において開催していく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
レヴュー論文執筆における遅延が生じ,計画されていた予備調査ならびに本調査が実施できなかったため。 次年度使用額は,今年度の研究が遅延したことによる予備調査の未実施に伴い発生した未使用額であり,上記平成26年度請求額とあわせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。具体的には、予備調査・本調査にかかる調査会社委託費にあてる。
|
Research Products
(13 results)