2011 Fiscal Year Research-status Report
喪失体験のある子どもを支える学校での支援方法の開発
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23530850
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小林 朋子 静岡大学, 教育学部, 准教授 (90337733)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳田 克己 筑波大学, 医学医療系, 教授 (30197868)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 教育系心理学 / 喪失反応 / こころのケア |
Research Abstract |
本研究では、自殺や災害などにより、大切な人を失った子どもを「学校」で支えるための支援内容と方法を開発・提言することを目的としている。H23年度は喪失体験を抱えた子どもやクラスに対する教師のとまどいや対応の実情を明らかにするため、面接調査およびアンケート調査を行った。 面接調査では、実際に大切な人を亡くした子どもに対応した教師が対応上で感じた不安や難しさはどの点にあるのかを明らかにした。対象者は教職歴15~38年の小中学校教師5名であった。面接により得られたインタビューデータをM-GTAを用いて解析した。その結果、39個の概念を生成し、さらに概念<子どもの気持ちを理解することの難しさ>を中心に、対応や教師の考え、支えるものなどに注目して17個の≪カテゴリー≫が見いだされ、そして9個の【カテゴリー・グループ】にまとめられた。これらのプロセスを基にモデル図を作成した。子どもへの対応や保護者の対応に関して、難しさの中核ににあるのが【遺族の心情を理解することの難しさ】であることがわかった。 次に、教師を対象としたアンケート調査を行い、小・中・高校教師等195名から回答が得られた。そのうち大切な人を亡くした子どもにかかわった経験のある教師は62.6%であり、その原因で最も多かったのが病気、次いで自殺となった。教師の属性ごとに喪失対応経験の有無でχ2検定を行ったところ、教師の年代において有意な差が認められ、対応経験は20代で少なく、50代の教師で多いことがわかった。また原因では、病気による死別が小学校で有意に多かった。次に、対応した経験がある教師のデータのみを対象にし解析を進めていったところ、困難を感じた点は「(大切な人を亡くした)子どもへの具体的な声のかけ方」14.7%、「子どもの不安定な気持ち」11.5%となった。本研究の成果は、日本カウンセリング学会にて報告予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
教師を対象とした面接調査およびアンケート調査を実施し、大切な人を亡くした子どもに対応する際のとまどいや対応について明らかにすることができた。これにより、次の研究に必要な子どもへの支援内容に関する項目を作成できる段階まで進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
H23年度では、大切な人を亡くした子どもに対応する際のとまどいや対応について明らかにした。次の研究では、これらの研究から得られた対応方法について、デルファイ法によるアンケート調査を2回行う。まずSTEP1として専門家によりH23年度の結果をふまえた子どもへの支援内容に関する項目を作成し、STEP2ではその項目を基に専門家((1)学校臨床経験がある、(2)緊急支援の経験がある)を対象とした調査を行う。調査では、提示した支援内容について9段階のリッカート法で回答を求め、項目ごとに意見を記述してもらう。STEP3では、第1回のデルファイ法による調査結果をまとめ、回答した専門家に結果をフィードバックした上で、さらに同様の質問について回答を求める調査を行う。これにより、専門家の意見を集約していくことを行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者が出産のため、研究分担者も含めてH24年度の研究は行わない予定である。
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