2012 Fiscal Year Research-status Report
記述式問題で測定される能力の構造とその発達過程に関する縦断的研究
Project/Area Number |
23530851
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石井 秀宗 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 准教授 (30342934)
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Keywords | 教育心理学 / 教育測定 / 教育評価 |
Research Abstract |
受検者の回答に影響を及ぼす要因の1つに,テストの構造的性質が挙げられる。構造的性質とは,テストの内容を「どのように問うか」ということに関わるもので,テストフォーマット(本文を含めたテスト全体の構成),設問形式(記述式問題,多枝選択式問題),設問の問い方(問いの立て方)などがこれに当たる。これまで,構造的性質の僅かな違いが,受検者の回答に影響を及ぼすことが明らかとなり,構造的性質について実証的に検討することの意義が示されてきた。 しかしながら,それらの研究では,中学3年生のみを検討したものであり,学年別(年齢別)に検討したものではない。国語力(読解力)は学年により変化するものであることを踏まえると,先行研究で得られた知見を一般化するためには,同一構造のテストを他の学年にも実施し,学年間で比較検討する必要性が考えられる。 そこで本年度は,中学2年生と3年生を対象に,設問の問い方が受検者の能力評価に及ぼす影響とその学年差について検討した。 その結果,以下の点が明らかにされた。 まず,一文抜き出し問題における回答方法は,学年に関わりなく,得点率及び識別力に影響を及ぼさない可能性が示唆された。また,具体例を挙げさせる設問において,回答となる一文がある場合には,中程度の難易度になり,回答となる一文がない場合には,難しい設問になり得るということがわかった。さらに,3年生においては,前者は受検者の能力を弁別するのに有効であるとは言いがたく,後者は受検者の能力を弁別するのに有効な設問になり得ることがわかった。会話文の空所を埋める設問において,3年生では,空所を全て同一の形で表記するより,空所の形を変えて表記する方が,受検者の能力をより弁別する設問になることも示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度において,記述式問題で測定される能力の構造について,小学生と中学生を対比させた検討を行いその異同を明らかにした。単一のテストではなく,異なるテストを用いていることから,結果の外的妥当性がある程度確保されたと考えられる。 2年度目は,記述式問題で測定される能力の発達過程を捉えるため,中学2年生と3年生に同一問題を実施し,結果の比較を行った。その結果,学年(年齢)の違いによる能力の差異の検討を行い,研究結果を学会で報告した。 また2年度目は,上記とは別に,能力の発達的変化を捉えるため,縦断的データの収集も行い,記述式問題で測定される能力の発達過程について,縦断的な検討を行うための調査を遂行した。 以上より,本研究は,おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,まず2年度目に収集したデータの分析を行い,記述式能力の発達過程について検討する。1年の間隔をあけで,同一集団に同じテストを実施しているため,1回目の記憶効果や練習効果が残っているとは考え難い。もし,受検者の応答傾向に変化が生じていたならば,それは能力発達と捉えることができる。このデータを分析することにより,受検者集団において,どのような能力変化が観察されるかを明らかにし,記述式問題で測定される能力の発達過程を明らかにする。 また,調査を継続することも予定している。中学生の3年間は,さまざまな能力が急激に変化する時期でもある。それゆえ,単一の集団を追うだけでなく,他の集団,他の学年における検討も行い,結果の普遍性を確認する必要がある。そのため,今後も調査を継続し,データを収集する必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(5 results)