2013 Fiscal Year Research-status Report
記述式問題で測定される能力の構造とその発達過程に関する縦断的研究
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23530851
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石井 秀宗 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (30342934)
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Keywords | 教育心理学 / 教育測定 |
Research Abstract |
繰り返し実施したテストの結果を用いて,記述能力を含む読解力の発達的変化について検討した.テストとしては,高校入試問題を基にした15項目(記述式8,選択式7)からなるテストを用いた.ただし,いくつかの項目において設問構造を変えた冊子も作成したため,延べ項目数は20となった.実施時間は各冊子45分であった. 1つの公立中学校において,2011年7月に,2年生及び3年生を対象に1回目の調査を行った.次に,2012年9月に,同校において2回目の調査を行った. 2回目調査時の3年生は,2年生の時にも同じ調査に参加していたことになる. 正答を1点,部分正答がある場合は0.5点,誤答を0点として採点し,合計得点を算出した.各分布の平均(SD)は,11-2年生7.11(3.16),11-3年生7.67(3.16),12-3年生7.95(3.26)であった.記述式問題8題に対する無回答数の平均(SD)は,11-2年生1.17 (2.15),11-3年生0.76 (1.61),12-3年生1.03(2.05)であった.項目正答率については,ほとんどの項目で,3年生のほうが項目正答率が高いことが観察された. 以上の結果と,関連する要因を総合的に検討したところ,国語読解力は,2年次から3年次にかけて発達していると考えて良いであろうが,受検勉強効果を含む発達的変化やcarry-over効果もさることながら,学年団の影響も大きい可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度において,記述式問題で測定される能力の構造について,小学生と中学生を対比させた検討を行いその異同を明らかにした。単一のテストではなく,異なるテストを用いていることから,結果の外的妥当性がある程度確保されたと考えられる。 2年度目は,記述式問題で測定される能力の発達過程を捉えるため,中学2年生と3年生に同一問題を実施し,結果の比較を行った。その結果,学年(年齢)の違いによる能力の差異の検討を行い,研究結果を学会で報告した。 また2年度目は,上記とは別に,能力の発達的変化を捉えるため,縦断的データの収集も行い,記述式問題で測定される能力の発達過程について,縦断的な検討を行うための調査を遂行した。 3年度目は,収集した縦断的データを分析し,国語読解力の発達的変化について検討した。あわせて,縦断的データの収集を続け,さらなる発達過程を捉える準備を行った。 以上より,本研究は,おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,これまでに収集したデータの分析を行い,国語読解力及び記述式能力の発達過程についてさらに検討する。carry-over効果よりも学年団の効果のほうが大きいことが示唆された。しかし,その表れ方にも領域や設問の形式などによって差が見られるので,今後は,どのようにして学年団の効果が生じるか,また,それを改善する手立てを考える糸口を探ることが必要である。
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