2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530858
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
杉村 伸一郎 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (40235891)
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Keywords | 空間認知 / イメージ / 身体性 / 幼児教育 / 保育 |
Research Abstract |
本研究の目的は,幼児期における空間的思考力の育成を考える上で基礎となる科学的な知見を得ることであった。そのために,今年度は,昨年度に引き続き,幼稚園における空間思考の観察と,幼児の空間的思考に影響を与える要因の実験的検討を行った。 観察は,保育者が幼児にどのような空間的指示を与え,幼児がそれをどのように受け取るのか,という観点から実施した。幼児は,現実空間の中で移動したり物の探索や操作を行ったりして,多くのことを学ぶ。幼稚園においては,保育者が,それらの活動を支援することにより,学びの量や質を高めている。その際に有効に使われているのが,空間的な指示であることが明らかになった。空間的な指示は,「もう少し上」というように言語的に行われたり,ある方向を指さすなど非言語的に行われたりしており,それらの体系化を行った。 実験的検討では,幼児における玉の位置や軌道の理解において,運動や予想がどのような効果を持つかを,保育園の年中児と年長児50名を対象に調べた。玉の位置や軌道の理解の測定にはPiaget & Inhelder(1966)や杉村(2009)で用いられた3つの玉課題を,訓練には円盤を180度回転させた場合に円盤上の動物がどのように動くかを予想させる課題を用い,子どもが動物の回転軌道を予想し円盤を回転させる(,予想+運動群),子どもは予想だけ行い円盤の回転は実験者が行う(予想群),子どもは予想せずに円盤の回転だけを行う(運動群)を設定した。その結果,軌道を予想させることが運動と同等の効果を持つことが明らかとなり,幼児期のイメージの発達に予想が大きな役割を果たしていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度に予定していた,研究3「実験により幼児の空間的思考に影響を与える要因を検討する」に関しては,実験を2つ行い,一定の結論を得ることができたが,前年度から継続している,研究1「観察により幼稚園における空間的思考の実態を明らかにする」と研究2「実験や調査により幼児の空間的思考力の個人差を把握する」に関しては,観察データの整理を行なっている段階で,やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,研究1「観察により幼稚園における空間的思考の実態を明らかにする」を継続して実施するとともに,研究3「実験により幼児の空間的思考に影響を与える要因を検討する」においても実験を追加し,それらに基づき,保育や幼児教育における空間的思考力の育成に関する提言をまとめる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度実施予定の研究の一部を延期したので,その分の謝金が繰越になった。また,海外出張も次年度にしたので,その分の旅費が繰越になった。旅費に関しては,既に海外での学会発表が採択されており使用する見込である。
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