2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530859
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
藤田 敦 大分大学, 教育福祉科学部, 准教授 (80253376)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 教育系心理学 / 活用型学力 / 学習転移 |
Research Abstract |
既に学習した知識や技能を教科や領域の枠を越えて応用する能力としての「活用型学力」を育成する授業デザインを提案することが本研究の目的である。特に,ある教科(単元)で学習した内容を,別の教科や授業外の日常的な問題解決場面にも活用できる知識に転化することを促す授業中の教授学習活動について検討する。本年度は,授業実践に関する研究や事例報告の収集を行い,学習転移の成立に関わると予想される教授活動について授業展開の各段階別に整理した。その結果,以下の教授活動が,学習内容の一般性や応用性,他の学習領域との関連性に対する認識を促進すると予想された。I:導入(子どもの生活世界からの具体事例の選択。学習内容と関連する生活世界の中の事象の想起。学習する領域の意味や価値の説明。前時までの学習内容との関連性の示唆。),II:テーマの提示(具体的な例題の提示。工作的発問形式による学習内容の意味の確認・動機付け。),III:問題解決・発見活動(過去の学習内容や問題解決方法との関連づけや比較。他の単元・教科の内容の提示や関連づけ。一般化されたルール表現への促し。言語的な説明活動。),IV.確認・練習(タイプの異なる練習問題の提示や比較。学習内容の応用範囲の確認や問題練習。ルールが適用可能な問題の作題。),V:まとめ(本時の学習内容を抽象的なルール形式により表現。ルールの要素と学習内容の要素との対応付け。新たな課題(次時の学習内容)への関連性・発展性の予告。)。以上の教授活動による学習成果に対する実際の効果については,教授学習心理学領域における実験的研究の中で指摘されてきた転移を促進する各要因との関連を考察することで推定している。本研究の結果は,次年度以降の研究において「活用型学力」の向上をねらいとする授業デザインを構想する際の具体的な手がかりを提供するものになっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主に文献研究を中心とした本年度の研究計画については達成できたと言える。また,先行研究で明らかになっている転移の促進要因と,今回の研究において授業実践の中に見いだされた教授活動との対応については,ほぼ仮説通りの関連性が見いだされており,次年度以降の研究も予定を変更することなく,実施していくことができると判断される。ただし,当初予定していた先行研究の量的データに対して統計的なメタ分析を行い,要因間の重要性の比較分析を行うという計画に関しては,予想通りの結果を得ることができず,次年度以降に持ち越すことになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究で明らかになった知識転移を促進する教授学習活動を計画的に配置した授業モデルを作成し,その教育効果を測定する。具体的には,ある特定の中心概念を学習することを目的として,種々の数学概念や他の教科領域,生活世界との関連性を明らかにする学習活動(授業案)を計画する。授業展開においては,教師による説明や具体例の提示,資料や教材の構成,発問や練習・応用問題等を,知識転移への効果を考慮して計画的に配置する。この授業による効果は,学習者の,中心概念や関連概念に対する理解の程度,興味・関心の深まり,社会的な有用性や意義の認識,転移課題成績などによって評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度に続いて理論的研究や授業記録の文献と授業記録映像データの収集を継続する。さらに実際の授業場面の記録や実験授業の実施にかかるビデオカメラやプロジェクター等の機材,教材用の消耗品等の購入を行う。なお,前年度は,例年秋に開催される心理学関連の学会において研究成果を発表するまでには至らず,予定していた旅費の執行に残額が生じた。前年度までの研究成果は,今年度前半に得られる研究知見とあわせて,今秋の学会(教育心理学会,九州心理学会)において発表する予定であり,そのための旅費も必要となる。また,授業記録映像のテキスト化等の作業にかかる謝金も必要である。
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