2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530865
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
斉藤 こずゑ 國學院大學, 文学部, 教授 (70146736)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 映像発達研究法 / 映像実践 / 映像ナラティブ / 映像メディア・リテラシー / 観察 |
Research Abstract |
本研究は映像の発達的意味を明確にし、映像利用の発達心理学研究法を構築することを最終目的に、発達心理学研究者の映像実践と、他領域及び日常の各種映像実践を相対化する。具体的には、1子どもの図像・映像資料の収集と分析、2子どもを巡る映像実践に関するフィールド縦断研究を行っている。1は社会文化歴史的相対化、2は現代の日常的映像実践と発達研究の相対化である。両資料を分析し、映像のもつ特性と人々のもつ子ども・発達・育児観との相互規定関係を検討する。本研究では、一般的発達段階の具現化としての子どもの発達過程ではなく、特定の子どもの固有な発達過程を記録する映像実践の目標と意義を検討している。また映像に伴う倫理的問題は本研究の遂行過程に関わるため、子どもの映像実践の倫理的ガイドラインの試案を作成している。H23年度は、上記1については、予定どおり英国王立人類学協会図書館所蔵の映像資料の閲覧、12th RAI International Ethnographic Film Festivalに参加し映像資料を巡る多文化の情報収集を行った。震災の影響で予定していた海外での資料収集は次年度に延期し、資料分析を進めた。また上記2、子どもを巡る映像実践に関するフィールド研究(4月開始)は、上記1の資料と比較検討するために、現代の映像実践を縦断、横断的に把握している。特に1.育児ブログの縦断観察の成果は学会で発表した(「育児ブログにおける映像とブロガーの発達観」「発達ナラティヴにおける表象媒体と場の変容の効果」)。また、倫理関連書籍のレヴューや翻訳を開始した。当初の位置づけに比して、映像への倫理的接近が映像実践の運用倫理としてのみでなく、映像メディアリテラシーつまり映像内容の制作、解釈自体に深く関与することが分かった(「発達研究における倫理」新曜社)。今後もこの点により焦点化した研究を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度のため、各種資料収集と、フィールドワークの設定・開始、インタビュー対象者および内容の決定、探索的調査を行ない、並行して関連文献・資料の参照・考察、情報の整理によって、子どもを巡る映像の現状と歴史的経緯を把握し、文化比較の可能性を検討した。これらの計画実行に遅延が生じた理由は、1、この課題自体が盛りだくさんであったこと、2、震災の影響で授業日程が幾度も変更され、予定していた2回目の資料収集海外出張ができなくなったこと、3、文献資料の分析整理が、文字通り倒散壊した資料書籍の整理に追われたこと、など不可避の事態のため、実行に移せなかったことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度使用額は1,247,805であるが、この研究費が生じた主な事情は上記自己点検評価で述べたとおり、予定していた海外調査がH24年度以降に延期されたためである。そこでその計画も含めたH24年度以降の研究計画を以下にまとめる。1、子どもの図像・映像資料の収集: 国内外のアーカイブス機関に赴き、閲覧、複写可能な資料をデータ化する。検討課題1の社会、文化、歴史的な子どもの図像・映像資料を得るため、英国と米国の拠点に出張する。海外出張1(H24年1週間)育児日誌資料閲覧・複写のためにコロンビア大学図書館に赴く。海外出張2(H25年1月1週間)グアテマラ国立博物館図書館所蔵の映像資料の閲覧。海外出張3(H25年4月1週間)米国シアトルでのSRCD大会に参加し同時に南カリフォルニア大学の映像文化人類学センターの所蔵資料を閲覧する。海外出張4(H25年6月1週間)英国王立人類学協会図書館所蔵の映像資料の閲覧および映像祭参加。2、子どもを巡る映像実践に関するフィールド研究(継続中):上記1の資料と比較検討するために、現代の映像実践を縦断、横断的に把握する。1.育児ブログの縦断観察、2、育児漫画、育児映画、子ども対象の写真、育児日誌の分析。1,2ともに、映像作者である観察協力者や専門家に、映像利用および子ども・発達・育児観のインタビュー調査を行う。調査補助と、分析補助を学生に依頼する。H23年度の分析から出てきた映像の特性を、発達・育児観と関連付ける仮説を構築し、H24年度以降に検証すべき資料や、インタビュー内容を精査していく。今後、縦断資料の蓄積と分析に重点を置き、カテゴリの精錬によって、映像と発達の関係の理論化を目指す。成果は国内学会で発表するほか論文化する。さらに、映像実践に伴う倫理の問題について、ガイドラインを作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度の研究費の使用計画の概略を以下にまとめる1、物品費:(1)図書映像資料として、子どもの図像関連図書、映像分析関連図書、子どもの歴史関連図書、子どもの写真集、子どもの既成映画DVD、映像圧縮編集保存ソフト(2)映像関連機器として、映像分析用ノートブックパソコン、映像記録用デジタルビデオカメラおよび関連機器。ビデオ関連消耗品、プリンター関係消耗品、パソコン関連消耗品。(1)(2)合計概算700,000 2、旅費:海外学資料情報収集に関わる交通費(2往復)、宿泊費、資料収集費。国内学会および資料収集に関わる交通費、宿泊費、資料収集費。概算1,000,000 3、人件費・謝金として、国内調査補助、資料整理、映像分析補助、専門的知識の提供。概算200,000 4、その他として、交通費、資料複写費、映像関連施設図書館年会。概算200,000なお、H24年度の予算は2,447,805円であるので残額35万ほどはH25年4月に計画された海外出張費用に充てる。
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