2013 Fiscal Year Research-status Report
表記システムの発生・発達過程とその規定要因の分析:数表記を中心として
Project/Area Number |
23530875
|
Research Institution | Kyoto Notre Dame University |
Principal Investigator |
山形 恭子 京都ノートルダム女子大学, 心理学部, 教授 (20085963)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古池 若葉 京都女子大学, 発達教育学部, 准教授 (40307690)
|
Keywords | 数表記 / 数読字 / 数書字 / 数式表記 / 数概念課題 / 年少幼児 / 年長幼児 / 発達過程 |
Research Abstract |
平成25年度は数表記・数式表記の発生・発達過程ならびにその規定要因を検討するために以下の3点の研究を中心におこなった。 先ず第一に, これまで収集してきた年少幼児と年長幼児に関する調査データを分析し,その結果をまとめて学会で発表した。年少幼児の研究では数書字の発達過程を明らかにするとともに,数理解と文字・描画との関連性を検討した。他方,年長幼児の研究では数読字と数概念課題との関連性ならびに弁別課題を用いて数表記の形式的知識の発達を検討した。なお,これらの研究に関連して対象児数を増やすための追加調査もおこなった。 第二に,前年度から開始した1,2歳の年少幼児における縦断研究についてその途中経過をまとめて学会で報告した。本研究では縦断研究のデータから年少幼児の数に関連するエピソードの内容を分析し,その発達初期における特徴を導き出した。その結果,養育者との関わりを介して1歳代に他者の模倣を通じて数唱の萌芽とその発展が見られ,また,環境中の特定状況と結びついた数字や数表記の理解が出現することが見い出された。これらの結果から,従来,十分に解明されていない数・数表記の初期発達が対人場面・周囲の環境との相互作用を通じて現出することが示唆された。 第三に,数式表記の発達を解明するために5歳児と6歳児を対象に面接調査をおこなった。課題としては数読字課題・数書記課題,数概念理解に関する基数課題・順序数課題・数系列課題,数計算に関する加算・減算計数課題と数式表記課題,数式記号選択課題を用いた。数表記と数式表記の関連性やこれらと計算能力・数概念の発達との関係に関しては先行研究でこれまでほとんど解明されていないが,現在,この調査データを分析し、その発達と関連性を検討中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は数表記の読字・書字の発達に関する面接調査の結果からこれらの発達過程を解明するとともに,数唱・基数などの数関連課題・数概念課題との関連性を追究し,数の理解と産出に関する発達過程とその関連要因を解明することができた。 また,本年度は数表記の発達に関する年少幼児における縦断研究を前年度に引き続いて継続し,データの収集をおこなうとともにその途中経過の報告として発達初期段階の特徴をエピソード分析から示した。 さらに,数式表記の発達を調べるために5歳児と6歳児を対象に面接調査をおこない,現在,その結果を分析中である。 以上の本年度における研究から,交付申請書に記載した研究目的のためのデータ収集と結果の分析は順調に進展していると判断される。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は1,2歳児で開始した縦断研究を継続し,データを収集するとともに,これまでえられた数表記・数式表記に関する実証データを統計的に解析し,研究発表をおこなうとともに論文にまとめる作業に取り掛かる予定である。 また,これらの論文作成の作業を通じて,本研究の残された検討課題についても明らかにし,その吟味と新しい研究計画策定に繋ぐことを目指す予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
数発達や認知発達に関連する図書や調査用などの物品の購入が少なかったこと,ならびに,謝金に関して25年度にすでに使用しているが, 助成金からまだ引き落としていないために次年度使用額が生じた。 数発達やシンボル発達ならびに認知発達に関する図書を購入する費用として使用するとともに縦断研究と面接調査における協力者に対する謝金の支払い用に充てたい。 また,これまで収集したデータの分析のための人件費として使用するとともに,次年度も引き続き海外の学会において研究成果を発表し,あわせて,海外のこの分野の研究の情報を収集するために旅費として使用する予定である。
|
Research Products
(10 results)