2014 Fiscal Year Annual Research Report
行為実行とその観察が健忘患者のメタ認知の改善に及ぼす効果に関する基礎的研究
Project/Area Number |
23530879
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
野村 幸正 関西大学, 文学部, 教授 (30113137)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 行為 / 健忘症 / メタ認知 / 内部観測 / 実行 / ピクトグラム |
Outline of Annual Research Achievements |
交通事故等で脳を損傷し記憶障害を呈した場合,その機能を回復することは難しい。平成23年度は,健忘症患者の病識の欠如と行為に表れる問題との関係を解明するための研究を推進するに必要な,基本的なメタ認知モデルについて検討を行った。 平成24年度はこのメタ認知モデルに基づいて研究を進めたが,表象の機能を前提とするメタ認知モデルに依拠する限り,その機能に障害がみられる脳損傷患者には対応できない事実,事例も明らかにされた。そこで,明確な意図を持たないにも関わらず外界の変化によって行為が生成されていく可能性をピクトグラム(視覚シンボル)研究の知見に託し,一連の実験的研究を推し進めた。得られた結果は,ピクトグラムが情報の伝達や想起を促進する手立てとして有効である可能性を示唆するものであった。平成25年度においては,ピクトグラムによる情報伝達を促進するためのデザインについて実験的研究を行った。単一の物体の描写で表現されるピクトグラムが容易に理解されるためには,基準枠と呼ばれるピクトグラムの枠線に対して,物体が占める面積比率を調整することが有効であることが示唆された。 そこで平成26年度には,ピクトグラムのデザインに関する研究を継続し,特に視点の影響について検討を行った。ピクトグラム内に,物体を真正面や真横からの見えとして二次元的に表現する場合と,物体を斜めからの見えとして三次元的に表現する場合とで意味明瞭度を既存の材料で比較した結果,前者の方が有効なデザインである可能性が示唆された。 また,ピクトグラムに関する基礎研究と並行して,健忘症患者のそれぞれの症状に見合う支援を模索した。すなわち,分析科学とは全く違った視点から,いまひとつの普遍性(一般化可能性)を理論的に検討し,その成果を「個人科学としての心理学-分析から自証へ」として上梓した。
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