2011 Fiscal Year Research-status Report
大学におけるハラスメント相談への対応・介入に関する臨床心理学的研究
Project/Area Number |
23530888
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
池田 忠義 東北大学, 高等教育開発推進センター, 准教授 (70333763)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉武 清實 東北大学, 高等教育開発推進センター, 教授 (80111243)
堀 匡 東北大学, 高等教育開発推進センター, 助教 (70512565)
佐藤 静香 東北大学, 高等教育開発推進センター, 助手 (30344641)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 大学におけるハラスメント / 新聞報道の分析 / 判例の分析 |
Research Abstract |
本年度は,大学におけるハラスメント問題に関する先行研究,新聞報道,判例の収集・分析により,大学におけるハラスメント問題の内容や対応等の特徴について分析・検討した。 先行研究の分析の結果,大学におけるハラスメントについては,セクシュアル・ハラスメントやパワー・ハラスメント等,他の場でも生じるものと同時に,一般にアカデミック・ハラスメントと呼ばれる大学独自のものがあることがあること,そこには,被害者や加害者の特徴に加え,両者の関係や組織の構造・特徴等があることが明らかになった。また,アカデミック・ハラスメントの発生メカニズム,被害者に与える影響等に関する実証的な研究の必要性が示された。 新聞報道に関するデータベース調査では,毎年,約40件の新聞報道があり,それは大学の処分に関するものと訴訟に関するものに大別できた。アカデミック・ハラスメントやパワー・ハラスメントについては,定義が十分に定まっていないことから,アカデミック・ハラスメントを定義した上で,平成12年から平成23年の11年間の新聞報道について集計・分析した結果、平成14年以降,セクシュアル・ハラスメントのみならず,アカデミック・ハラスメントでの処分や訴訟の例が増え,その比率が上昇してきていた。また,大学におけるハラスメントは,セクシュアル・ハラスメント,アカデミック・ハラスメントともに教員と学生間のものが約75%を占めること,アカデミック・ハラスメントに比してセクシュアル・ハラスメントの処分が重いことが明らかになった。 判例についても,新聞報道と同様に,アカデミック・ハラスメントに関するものが増加する傾向がうかがわれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先行研究,新聞報道に関する分析はおおむねなされたが,判例については収集後の分析が十分進んではいないため,判例の内容を更に精査することが必要であり,それと合わせて,新聞報道に関する分析を更に進めることによって,ハラスメントが発生するプロセス等についてより詳細に検討できる。
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Strategy for Future Research Activity |
収集した判例の内容を詳細に分析することを通して,大学におけるハラスメント問題の特徴,ハラスメントが発生するプロセスやについて検討していく。 次に,先行研究,新聞報道,判例の分析を踏まえ,実際に相談に対応した事例に基づいて累積的事例研究を行い,大学におけるハラスメント問題の発生機序,相談・問題解決プロセスにおける来談者への有効な援助のあり方を検討する。具体的には以下のような分析を行う。 (1)これまでの相談事例を集積し,被害者の属性ごとに分類し,それぞれの加害者の特徴,被害者・加害者関係を分類 (2)ハラスメント相談来談者の初期のニーズ・心理状態,その変化のプロセスの分類 (3)来談者の心理状態の変化のプロセスに応じた有効な援助法の検討
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は,当初計画していた新聞報道の分析および判例の分析の一部を延期することによって生じたものであり,延期した分の新聞報道および判例の分析に必要な経費として平成24年度請求額と合わせて使用する予定である。
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