2013 Fiscal Year Research-status Report
セラピストの発話に関する言語論的分析と訓練モデルの構築
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23530895
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大山 泰宏 京都大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (00293936)
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Keywords | 心理療法 / 能 / セラピストの発話 / コーパス |
Research Abstract |
日本の心理療法の背景にある,日本における言語使用・言語理解の特徴およびその背後の日本心性や癒しのプロセスに関する研究をおこなった。そのために,①魂の救済がテーマとなっている古典芸能の能と心理療法との関連に関する研究,②明治期以降の日本の心理療法導入史に関する研究,の2つを重点的に実施した。①に関しては,a),「引き受ける」という,心理療法でも能でもキーワードとなる言葉をめぐって,能楽師を招いてのワークショップとシンポジウムを開催した。また,b) マレーシアでの3rd Asian Pacific Rim International Counselling & Psychotherapy Conference 2013で,能と対比させつつ日本的な心理療法の特徴を明らかにして,西欧のconflict-integration model と対比させ,paradox-containing model という心的解決の方法にもとづく東洋的な心理療法のモデルを提唱した。さらに,フランクフルトのジグムント=フロイト研究所での招待講演では,その言語的特徴に特化して,メタファーとは異なり心的事象を外的事象と呼応させて語る語法,そこで生じる心的なプロセス,外的事象を語り手が述べることでその内的事象を聴き手が了解するプロセスなどに焦点をあて,精神分析家やフランクフルト大学の学生との討議をおこなった。②に関しては,こうした内的事象と外的事象を呼応させて語る語法が,日本の伝統的なアニミズム的心性と深く関連していることを明らかにし,また,明治期の日本での催眠の流行が,心因という考え方を日本人に抵抗なく受け入れられる素地を作ったことを示した。この成果は,前出の学会にて発表された。 また,本課題研究の成果を集積し発信するため,HPの作成に取りかかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コーパスからの発話事例の類型化等に関しては,これからの課題ではあるが,日本の心理療法の前提となる諸々の事柄に関しては,その研究の全体的方向性が定まり,豊かな進展をみせ,また国際学会での発表で一定の評価を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
セラピストの発話事例を集めたコーパスを使用した,心理療法における言語使用の特徴抽出と類型化に関しては,まだ途上である。研究期間の一年延長が認められたので,平成26年度は,この点を重点的におこなう予定である。能と心理療法の研究に関しては,本研究とは別の研究課題へと発展させる予定である。 本年度は,コーパスからの発話事例から作成したモデルに関して,経験のある心理療法家による合宿形式の検討会を開催する。このことにより,作成されたモデルの妥当性の検討をおこない,また修正等をおこなっていく。 研究成果の発信に関しては,HPの枠組みが完成しているので,そこに掲載するコンテンツの作成に関して焦点をあてる予定である。 本研究は,補助金の支給期間が終了した後も,さらに継続しておこなっていくべきものであり,科研費をはじめ研究助成金での研究に向けた計画を立案していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
セラピストの発話のコーパスからの発話事例の抽出について,まだ時間がかかり,そのモデルに関する検討がさらに必要であるため。 発話事例からの心理療法における発話に関する検討をおこなうための検討会をおこなうために,使用する。また,HPのコンテンツに関して掲載をしていくための謝金として使用する。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Implication of silence in a Japanese psychotherapy context: a preliminary study using quantitative analysis of silence and utterance of a therapist and a client2013
Author(s)
Nagaoka, C., Kuwabara, T.,Yoshikawa, S., Watabe, M., Komori, M., Oyama, Y., & Hatanaka, C.
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Journal Title
Asia Pacific Journal of Counselling and Psychotherapy
Volume: 4
Pages: 147-152
DOI
Peer Reviewed
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