2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530900
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
堀内 孝 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (00333162)
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Keywords | 解離傾向 / エピソード記憶 / 自己明確性 / 自己概念 |
Research Abstract |
解離の主たる特徴は自分自身に関する記憶,すなわち,自伝的記憶の障害にある。本研究の目的は,Conway(2005)の自己-記憶システム(Self-Memory System)に準拠し,自己-記憶システムの構成要素である自伝的記憶知識ベース(概念的自己およびエピソード記憶)の観点から,解離の認知特性を検討することである。平成23年度の研究成果から,解離傾向者の自己知識は統合度(自己明確性)が低いことが明らかとなった。しかしながら,自己明確性尺度はエピソード記憶システムにおける自己知識の明確性のみを測定するわけでなく,意味記憶システムにおける自己知識である自己概念の明確性を測定している可能性も指摘される。そこで,本年度は,Campbell(1990)などを参考にして自己概念の明確性を測定し,解離傾向との関連を検討した。調査1では,ポジティブ語とネガティブ語に対して自分自身にあてはまる程度(適合度)と確信度の評定を求めた。そして,解離傾向との相関係数を求めた結果,ネガティブ語の適合度と解離傾向に弱い相関が認められたのみであった。調査2では,双極性の形容詞対を単極にばらし,対極の適合度評定の矛盾度を測定した。そして,解離傾向との相関係数を求めた結果,矛盾度と解離傾向の間に有意な相関は認められなかった。以上の結果は,解離傾向者の自己知識の統合度(自己明確性)の低さは,エピソード記憶システムの自己知識の明確性の低さに起因することを示唆するものである。この結論をさらに検証するため,過程分離手続を適用することにより,自分自身について判断を行った刺激語のエピソード想起における回想成分と熟知性成分を分離する実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に準じて,調査研究を二つと実験を一つ実施した。本年度の研究から,解離傾向者の自己知識の統合度(自己明確性)の低さは,エピソード記憶システムの自己知識の明確性の低さに起因する,という研究知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年は研究計画の最終年度なので,得られた研究成果を総合的にまとめ,報告書を作成する。必要に応じては,追加実験を実施する。学会発表,論文投稿は成果に応じて随時行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23-24年度の成果を学会で発表し,論文投稿するために,翻訳・校正費,研究成果発表費(学会参加費,論文集代,論文投稿料など),資料収集費,論文別刷代などが必要である。
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Research Products
(1 results)