2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23530900
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
堀内 孝 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (00333162)
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Keywords | 解離傾向 / 自伝的記憶 / 自己明確性 / 自己複雑性 / 統合度 |
Research Abstract |
解離の主たる特徴は自分自身に関する記憶,すなわち,自伝的記憶の障害にある。本研究の目的は,Conway(2005)の自己-記憶システムに準拠し,自己-記憶システムの構成要素である自伝的記憶知識ベース(概念的自己およびエピソード記憶)の観点から,解離の認知特性を検討することである。 解離の原因として心的外傷やストレスが指摘されているが,そのようなネガティブで強い情動状態に長期間さらされることによって,解離傾向の高い人の否定的な自伝的記憶は分化し,統合度が高くなっていることが予測される。研究1では,分化度の指標として自己複雑性,統合度の指標として自己明確性を採用した。解離を従属変数,自己明確性とネガティブ領域の自己複雑性を独立変数とする重回帰分析を行ったところ,自己明確性にのみに有意な標準偏回帰係数が得られた(-.34)。この結果は,解離傾向者の自己知識は主に統合度の低さに特徴づけられることを示すものである。ところで,自己明確性尺度はエピソード記憶の自己知識だけでなく,意味記憶の自己知識の明確性も測定している可能性が指摘される。研究2では,自己概念の極端さと確信度が解離に及ぼす影響を検討した結果,解離の下位因子である健忘と確信度にのみ弱い相関が認められた。研究3では,ポジティブ語とネガティブ語に対して自己適合度と確信度の評定を求めた結果,ネガティブ語の適合度と解離にのみ弱い相関が認められた。研究4では,双極性の形容詞対を単極にし,対極の適合度評定の矛盾度を測定した結果,矛盾度と解離の間には有意な相関は認められなかった。以上の結果は,解離傾向者の自己知識の統合度の低さは,エピソード記憶の自己知識の明確性の低さに起因することを示唆するものである。 これらの成果は,トラウマティック・ストレス学会で発表すると同時に,研究雑誌に投稿し,現在,審査中の状態にある。
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