2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530903
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
有村 達之 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80264000)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡 孝和 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60291514)
松下 智子 九州大学, 健康科学センター, 准教授 (40618071)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 医療・福祉 / 臨床 / ストレス / 心身症 |
Research Abstract |
本研究課題は失体感症を評価する質問紙を開発し、心身症症状との相関を調査するものである。失体感症とは、疲労感、緊張感や身体疾患の症状など身体感覚への気付きが乏しいという心身症患者の特徴を指す概念である。失体感症は、心身症のリスクファクターで、治療抵抗性心身症の特徴であると臨床的には考えられているが、失体感症評価の標準的な手法は確立されておらず、研究はすすんでいない。そこでわれわれは失体感症を評価する質問紙を開発し、十分な妥当性と信頼性を確認した後に、様々な心身症症状との関連性を調査することを計画した。 平成23年度では、1失体感症を評価する質問紙を開発し、患者群での妥当性、信頼性を検討すること、2失体感症質問紙と温冷覚閾値との対応を調査(質問紙の妥当性検討)、3失体感症傾向と糖尿病コントロールとの相関を調査することが目的であった。 1については、415名の大学生から得たデータをもとに23項目からなる失体感症尺度を開発することができた(心身医学、印刷中)。これは「体感同定困難」「過剰適応」「体感に基づく健康管理の欠如」の3つの下位尺度から構成され、総得点および下位尺度のいずれにおいても、内的整合性が高く(α=0.70-0.84)、再検査信頼性も十分であった (r=0.71-0.81)。失体感症尺度の総得点と下位尺度は、そのほとんどがTAS-20 と有意に相関し、失体感症尺度の妥当性をある程度支持すると考えられた。3については総合病院外来を受診中の糖尿病患者36名の失体感症尺度データを収集することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究目的の達成度に関しては、失体感症を評価する質問紙(失体感症尺度)は完成したが、その妥当性、信頼性を確認する作業が完了していないため、やや遅れていると評価した。 本研究課題では、大学生群と患者群における質問紙調査で失体感症尺度の妥当性と信頼性を確認した後、温冷覚閾値との関連性など次の課題へすすむことを計画していた。通常、心理尺度の妥当性を示すには、相関が予想される複数の質問紙との相関を示す、臨床群と健常群の群間差を示す(臨床的妥当性)など、複数のエビデンスが必要である。しかし、失体感症尺度は大学生群で良好な信頼性を示したが、妥当性を示すエビデンスは、失感情症(日本語版Toronto Alexithymia Scale 20; TAS20)との有意相関のみで、複数の心理尺度との相関を示すことができなかった。これは、失体感症尺度の構成概念妥当性を検証するのに適当な心理尺度を、TAS20以外に研究当初は見つけることができなかったためである。失体感症の構成概念妥当性は、身体感覚に関連した心理尺度との相関を検討するのが適切と考えられたが、それらの心理尺度は日本語で利用できるものはBody awareness questionnaire以外にほとんど見つけることができなかった。失体感症をはじめとする身体感覚については、従来心理学的研究の進んでいない領域なので、それらを評価する日本語の心理尺度が少ないのであろうと推測された。 そこで、失体感症尺度の十分な妥当性を示すには、他の心理尺度との相関を示す以外に、臨床的妥当性など、さらなる妥当性データを収集する必要があると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、失体感症尺度の妥当性と信頼性をさらに確認する作業を継続する。そこで、失体感症尺度と相関が予想される心理尺度との相関(構成概念妥当性)や臨床家によって失体感症と診断された被験者とそうでない被験者とで失体感症尺度得点に有意差があることを示す(臨床的妥当性)など、さらなるエビデンスの収集を課題とする。 そこで、今後は、温冷覚閾値と失体感症尺度との関連の調査、臨床群での質問紙調査による失体感症妥当性の確認、糖尿病コントロールとの関連性の検討など従来計画していた研究に加えて、1新たに大学生を対象に失体感症と理論的に相関が予測される質問紙(Body awareness questionnaireなど)と失体感症尺度を同時に実施し、失体感症尺度の妥当性を示すデータを収集、2臨床的妥当性のデータを収集、3ヨーガなど身体感覚への気付きを養う介入法の熟練者、初心者で失体感症尺度得点に有意差があることを示すなどの方策を新たに実施し、失体感症尺度の妥当性を示すエビデンスを追加することにした。 臨床的妥当性については、岡、松下、有村(2011)によって定義した失体感症概念を満たす患者とそうでない患者で、失体感症尺度得点に差があるかどうかの検証を心療内科外来患者で実施する。また、ヨーガなど身体への気付きを養う介入法では、熟練者と未熟練者で身体感覚への気付きに違いがあり、失体感症尺度得点に差が生じると考えられるため、それをヨーガの指導者やヨーガの初心者に質問紙調査をすることで検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
失体感症に関する情報収集について関連学会への出席、研究に必要な書籍の購入、論文発表の際の英文校閲などに支出予定である。
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Research Products
(5 results)