2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530912
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Research Institution | Fuji Women's University |
Principal Investigator |
小山 充道 藤女子大学, 人間生活学部, 教授 (20170409)
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Keywords | 自分描画法 / 思い / 幼児 |
Research Abstract |
本年度は札幌あやしや幼稚園の協力を得て、園児とその保護者を対象として自分描画法?SPM)を取り込んだ独自のアンケートを実施した。日常生活で親が子どもと共にSPMに取り組む可能性について探った。結果はIBM SPSSver20等を用いて分析した。最終的には126名(4歳37名、5歳61名、6歳28名)の幼児と保護者から協力を得た(応答率38%)。 10個以上出現した絵は「家族50→顔50→自分44→キャラクター29→友達24→女の子19→ハート15→動物15→ママ13→パパ10→車10」と身近なものだった。気になるのは「キャラクター→自分→動物→アニメ→先生→ゲーム→ケーキ→バス→遠足→仮面ライダー等」だったが、出現回数は最多で「キャラクター」の6回であり個人差が認められた。背景は自然界の絵が多かった。感情の分析結果は、喜び(嬉しい7,楽しい59、幸せ8、安心6、自信1、意欲3、満足3)→興味(関心27、好奇心18)→願い(希望10,期待5,あこがれ21他)が大半を占めた。 保護者は4歳と5歳児では84%、6歳児では79%が「描画に思いが表れる」と答えた。男児では4歳で車や木、昆虫、駅など身近なものに関心が集まり、5歳で仮面ライダー、ロボット、ゲーム等のキャラクターに興味が湧く。6歳ではスーパーや地下鉄、将来といった社会とのふれ合いに関心が向く。女児は4歳では食物や生き物に興味が湧き、5歳では遠足や化粧など社会的関心が高まる。6歳になると洋服、キャラクター、雪など興味・関心の広がりが認められた。自己制御機能傾向[自己主張と自己抑制]から、幼児の向社会的行動を両高型・主張型・抑制型・両低型に分類。両高型が男女とも31~32%を占め、最多だった。他の型は20%代でほぼ均等だった。両高型が思いに関わる絵を多く描き(36%)、他の型は思いに関わる描画の有無ではほぼ変わりがなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
幼児期の自分描画法(SPM)に関する臨床基礎研究というテーマで、初年度の平成23年度は、4人の子どもを対象とした母親の育児日記ノート36冊[落書きを含む])をもとに、ビデオ映像、音声記録、各種描画等を用いて親の思いの分析を行った。その結果、親は同じ言葉使いが第2、第3、第4子に対して繰り返されるわけではなく、親自身も育児を通して成長し続けることがわかった。落書きの構成要素については「気になるもの」→「背景」→「自分」→「隠れているもの」の順で抵抗が減少、落書きはこの4要素でほとんどが占められていた。 2年目の平成24年度は、小山が直接次の2つの園児(全39名)にSPMを実施した。藤幼稚園児に対しては数名のグループで実施、ミナクル幼稚園児に対しては小山が個別に実施した。その結果、幼児が理解できるように手順を伝えるには工夫が必要、自分を描く際は「誰の絵かがわかるように、最初に○○ちゃんの絵を描いてみて」と言うと意が伝わること、幼児の自由画は「落書き」と捉えられること、題名づけから面接に繋がる対話を心がけることが重要等の知見が見い出された。 3年目は札幌あかしや幼稚園児とその保護者を対象としてSPMを取り込んだ独自のアンケートを実施した。その結果、多くの保護者が幼児の描画には思いが表れると思うと答えた。またアンケート用紙に書かれた指示内容だけで、SPMの実施を終えることができたことは特記できる。やり方がわかりやすく記されたマニュアルがあれば、親子が家庭でSPM(という落書き)遊びをすることができる証となった。 以上、3年間で予定していた研究はすこぶる順調に実施され、その成果もたくさん得られた。研究成果は例年通り、質的側面の分析結果に関しては日本心理臨床学会(平成26年8月、跡見学園大学)で、そして量的側面の結果は日本心理学会(平成26年9月、同志社大学)での発表を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
科学研究費に基づく自分描画法研究は本年度で11年目に入る。筆者は「本年度は自分描画法研究の最終年度にあたる」と心積もりをしている。今後の展開であるが、最終年度の本年は、自分描画法マニュアル(冊子)の作成を行い、これまでの研究成果をまとめる作業を行う。その後、「自分描画法」というタイトル(予定)で、書物として発行する準備を整える。以上の経過を経ることで、『自分描画法研究』について、社会への還元を行う。
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