2011 Fiscal Year Research-status Report
性犯罪被害者に対する周囲の理解と支援をもたらす要因の社会心理学的研究
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23530916
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Research Institution | Surugadai University |
Principal Investigator |
小俣 謙二 駿河台大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (60185668)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 被害者非難 |
Research Abstract |
本研究は、性犯罪被害者が公的機関や家族、友人などにその被害を訴えたり、相談したりすることを困難にする原因としてしばしば問題とされてきた、犯罪被害者への厳しい態度、被害者非難をもたらす心理的要因を明らかにし、第三者のそういった見方、態度を改善する方策を考えるための基礎的データを集めることを目的としている。具体的には、被害者非難をもたらす心理的要因を明らかにすることが主たる目的である。 23年度の研究では、被害者のライフスタイルとくに社会的に望ましくない風聞をもつ被害者に対する第三者の見方について、その心理的メカニズムを検討した。現時点では結果の分析途中であるため、最終的な意義を論じることはできないが、得られた知見は被害者の社会的評価によって関与する心理的要因が異なる可能性を示すものと思われる。 ただし、現時点で得られている知見からは、レイプ神話は下位概念に分類する必要があり、しかも下位概念によっては従来の評価とは異なる評価をする必要がある可能性がうかがえた。これは、欧米の研究で言われているよりも精緻な分析の必要性を示すものであり、新たな展開をもたらすという意義があろう。 一方、本研究では、非難の前提に、被害者の事前の注意や被害に対する事前の対処に対する評価が介在するという二段階モデルを提唱した。これについては、学会などで発表し、議論してゆく中で、さらに概念的な詰めが必要であることなどが指摘されてきた。したがって、そういった批判を考慮に入れてさらにモデルを洗練させることで、よりきめの細かい対策の提案につながってゆくものと期待される。 24年度では知人による加害の条件で検討する予定であるが、23年度にすでにデータの一部を得ている。また、その中で、第三者の共感能力が非難を弱める可能性についても検討している。今後はその結果の分析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実績の概要で述べたように、二段階モデルについては概念と操作的指標の問題で課題が指摘されたが、調査に関しては順調に進んでいる。 また、23年度中に予定では24年度に行うことになっている内容の調査まで実施し、やや早めに進んでいる。 以上の理由から、順調に進行中と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度では、すでに述べたように、まず、知人からの性的強制被害を受けた被害者に対する被害者非難の心理的メカニズムを明らかにする予定である。現時点で得られているデータを分析し、成果を学会等で発表する。 そのうえで、新たに出てきた問題点を解決する補足的な調査を実施する予定である。 同時に、23年度中に得られた、被害者の社会的望ましさを変数とした調査の結果を整理し、犯罪心理学会ないしは社会心理学会において学会発表する予定である。また、平行して学術論文としてまとめて公表したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上に述べたような実施計画から、24年度の予算は、アンケートの作成費用、データ入力など学生アルバイトの謝金、学会等への旅費、論文発表のための費用(英文校閲費、印刷費)が主となる。また、結果の分析の過程で、新たな統計ソフトの購入が必要となる可能性がある。また、多変量解析など統計手法の解説のための専門家招聘の費用が発生する可能性もある。
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Research Products
(2 results)