2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530919
|
Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
福島 哲夫 大妻女子大学, 人間関係学部, 教授 (60316916)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 澄 青森中央学院大学, 経営法学部, 教授 (80311504)
岩壁 茂 お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 准教授 (10326522)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 言語分析 / 感情分析 / 評価言語 / 心理療法のプロセスと効果 |
Research Abstract |
実際の心理療法の5事例10セッションを録音・録画したものを元にトランスクリプトを作成し、言語分析をおこなった。その中でもとくに感情を表す言語(評価言語)に関して、クライエントの発言とセラピストの発言の両方を分析した。 その結果、本研究における言語分析・質的分析・音声分析ともに、感情や評価言語を中心にすえることによって、セラピーのプロセスや効果の測定として非常に有効な方法となりうることが示唆された。今後はさらにClの問題・症状別の目標設定とその測定項目を対応させる工夫が必要であると言える。その意味では、ケースフォーミュレーションと組み合わせて使用すれば,単なる効果測定だけでなく、セラピーをより効果的に進めていくための指針や指標ともなると考えられる。 今後さらにデータを増やしていくことにより、分析結果の安定性を高めたり成功例と失敗例の比較による検討をはかる必要がある。現時点での手応えとして、成功したケースはセラピーの中でとくにセラピー中期においてClの感情面に十分に触れており、さらにその感情が内容的にも強度としても変化していくという特徴があると言える。そして、そのためにThが十分な共感を示しながらも、そのClの感情を肯定したり受け止める介入により、Clの感情調整をたすけ、その後さらにClの「名詞化表現」や「メタ認知」を促進するような介入により、感情の肯定的方向への変化や安定化をはかっているということがうかがわれる。その意味でセラピーにおけるTh-Cl関係は、やまだ(1987)の「うたう関係」や「並ぶ関係」の中でおこなわれる情動的コミュニケーションであるが、それらがさらに精緻に戦略化されたものであると言える。今後、さらにセラピー中の戦略化された情動的コミュニケーションについて、その戦略そのものと、そこから引き起こされるプロセスを明らかにしていきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心理療法の面接データ(録音・録画ならびにそれらをトランスクライブしたもの)はまだ不足しているが、順次集めているところである。分析作業とそれをまとめて考察する作業も、おおむね順調である。
|
Strategy for Future Research Activity |
心理療法の面接データの収集そのものが予定よりやや手間取っており、そのため次年度使用額(残額)が生じたが、これは今後、さらにデータを増やし、言語分析と感情分析を進めるために使用する。また、さらにもう一歩進めた心理療法のプロセスに関する研究や、心理療法における言語的戦略に関する研究を進めていく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後はデータ分析と考察、さらにその成果を学会発表することで、内外の研究者からの批判・コメントを得て、研究を深化させて行きたい。データ分析には人件費が必要となり、学会発表には旅費が必要となる。
|