2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23530919
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
福島 哲夫 大妻女子大学, 人間関係学部, 教授 (60316916)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 澄 青森中央学院大学, 経営法学部, 教授 (80311504)
岩壁 茂 お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 准教授 (10326522)
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Keywords | 心理療法 / 感情表出 / 機能言語 |
Research Abstract |
実際の心理療法の10数事例約100セッションを録音・録画したものを元にトランスクリプトを作成し、言語分析・質的分析・音声評定・クライエントおよびセラピストへのインタビューをおこなった。言語分析ではとくに感情を表す言語(評価言語)に関して、クライエントの発言とセラピストの発言の両方を分析した。 その結果、本研究における言語分析・質的分析・音声分析ともに、感情や評価言語を中心にすえることによって、セラピーのプロセスや効果の測定として非常に有効な方法となりうることが示唆された。 具体的には、成功したケースはセラピーの中でとくにセラピー中期においてクライエントの感情面に十分に触れており、さらにその感情が内容的にも強度としても変化していくという特徴があることが明らかになった。そして、そのためにセラピストが十分な共感を示しながらも、クライエントの感情を肯定したり受け止める介入により、クライエントの感情調整をたすけ、その後さらにクライエントの発話における「名詞化表現」や「メタ認知」を促進するような介入により、感情の肯定的方向への変化や安定化をはかっているということがうかがわれた。その意味でセラピーにおけるセラピスト-クライエント関係は、やまだ(1987)の「うたう関係」や「並ぶ関係」の中でおこなわれる情動的コミュニケーションであるが、それらがさらに精緻に戦略化されたものであることが確かめられた。 本研究を通じて、数多くの心理療法セッションの録音・録画・トランスクリプトが収集されたので、今後、さらにセラピー中の戦略化された情動的コミュニケーションについて、その戦略そのものと、そこから引き起こされるプロセスを明らかにしていきたい。
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