2011 Fiscal Year Research-status Report
児童養護施設入所児童のサクセスフル・アダプテーションを支える要因:追跡研究
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23530922
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Research Institution | University of the Sacred Heart |
Principal Investigator |
向井 隆代 聖心女子大学, 文学部, 教授 (00282252)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐伯 素子 聖徳大学, 人文学部, 准教授 (80383454)
齊藤 千鶴 東京福祉大学, 心理学部, 講師 (20407597)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 施設入所児童 / 心理社会的発達 / 縦断的研究 / 可塑性 / 適応 |
Research Abstract |
本研究では、児童養護施設に入所している児童の心理社会的発達の様相を継続調査し、リスク・グループの子どもたちの幼児期から児童期にわたる適応を支える保護因子を明らかにすることが目的である。今年度は、幼児期から調査を続けている施設入所児童を対象に、自己効力感、学校適応、自己制御機能、家族観、対人関係の枠組み等に関する課題や個別の面接調査を行った。また、施設職員に対しては質問紙調査と面接調査を実施し、担当児童の気質的特徴、問題行動、ライフイベント等についての情報収集を行った。質問紙調査のデータ入力と集計を行い、面接調査のコード化と分析に着手した。 現在、小学校入学前に得られている基礎的情報と気質的特徴、感情理解、発達検査の結果など、幼児期の適応や保護因子のデータと小学校入学後に得られたデータを合わせて分析を試みている。その結果、たとえば保護因子の一つとして着目している対人関係の枠組みでは、施設入所児童は家庭で養育されている児童とは異なる枠組みを示しており、施設児童の対人関係の枠組みは幼児期には担当職員の変更や施設環境の変動に影響を受けやすいことが示唆された。しかし施設入所児童においては、対人関係に関心をもたない児童の割合は非常に低く、家庭で養育されている児童の多くが両親を重要他者としているのに対し、施設入所児童は複数の重要他者に心理的機能を割り振り、枠組みを柔軟に発達させているとも考えられる。 また、発達初期のリスクの中でより深刻なものと考える虐待経験との関連についても分析を進めており、施設入所児童の中でも虐待経験が認められた児童はそうでない児童に比べ語彙力の発達が遅れていたり、問題行動が多い傾向が認められている。 以上の結果の一部について現在学会発表の準備を進めており、今年度中の国内外の学会で発表の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
施設入所児童を対象とする個別面接調査と行動観察、および職員を対象とする質問紙調査と面接調査についてはおおむね順調に進行している。しかし、データのコード化や児童の発達に伴う査定道具の開発は順調に進んでいるものとやや遅れているものがある。児童のジェンダー意識の測定尺度の妥当性・信頼性の検討は早急に行わなければならない。 また、ある程度は予想していたことであるが、施設入所児童の退所や職員の交替により、幼児期からのすべてのデータが揃っている対象児童の数がまだ限られるため、統計検定を含めた量的な分析には制約がある。そのため、職員インタビューの分析や児童を対象としての個別面接、行動観察等のデータに対し、質的な分析を中心に行っているのが現状である。
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Strategy for Future Research Activity |
対象児童の年齢が上がり、小学校中学年から高学年にかけて調査を継続していくことにより、行動化、内在化双方の問題行動のリスクが高まる思春期の適応を支える要因を明らかにしていくことが、本研究の今後の課題となる。そのため、幼児期や小学校低学年まで実施していた行動観察に替えて、児童自身が記入可能な調査票の開発と準備を早急に進める必要がある。今後は、職員に加え児童を対象に個別面接調査と質問紙調査を合わせて実施し、施設入所児童の心理社会的適応の様相とそれを支える要因を明らかにしていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査への協力同意が得られている児童養護施設にデータ収集や調査の打ち合わせのために出張する必要があるため、研究代表者、研究分担者ともに旅費を計上している。また、収集してきたデータの入力、コード化、録音内容の記録およびデータ分析に研究補助を必要とするため謝金を計上している。そのほか、関連書籍の購入、調査票の作成と調査準備に必要な物品費、消耗品費、印刷通信費等も予定している。
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