2011 Fiscal Year Research-status Report
地域在住高齢者の抑うつ低減のためのライフレビュー法の開発に関する研究
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23530928
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
志村 ゆず 名城大学, 人間学部, 准教授 (90363887)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 高齢者 / 抑うつ感 / 心理療法 / ライフレビュー法 / 効果評価 |
Research Abstract |
本研究では抑うつ感のある高齢者をスクリーニングし、ライフレビュー法を実施し統制条件と比較することによって抑うつ低減の効果を検証することを目的としている。平成23年度では1高齢者のライフレビュー法が抑うつ改善に及ぼす効果の検討に関する予備面接、2効果検証の指標としてライフレビュー機能尺度の項目の整備の2点に重点を絞って実施した。1に関する予備面接では、地域在住高齢者のための対象者の選定のためのスクリーニング方法の確立、介入手順の確認を行うことができた。市役所の高齢福祉課の窓口を通じて9名の高齢者を紹介してもらい、スクリーニング検査と研究についての説明と同意の結果、4名の高齢者が参加した。予備面接におけるスクリーニング調査から、抑うつ症状が重度ではないこと、抑うつ以外の精神症状があること、重篤な障害をかかえていること、身体機能に深刻な問題を抱えていること、などは倫理的な側面においても本研究の介入が10回以上のより長期にわたることによる負担が懸念された。また、訪問前に電話で問い合わせ、簡単なスクリーニングを行うことが時間制限上効率的であった。4名の対象者のうち、1名は視覚の重度障害を有していたため、抑うつ軽減までに20回以上の時間を要し現在でも支援中であるが、それ以外の対象者は、10回で抑うつ感の軽減が認められた。2のライフレビュー機能尺度については、以前に収集した尺度の因子構造と項目選定を再度確認し、(1)地域在住者に回答しやすい項目であること、(2)重複のある項目をはずす、(3)得点を算出しやすいこと、の3つの観点から検討し因子負荷量の高い順に8項目ずつを採用した。最終的な因子分析の結果、40項目5因子を抽出し、使用しやすい観点からの項目構成をおこなった。 以上より本年度の研究実績としては、介入手順の確認、ライフレビュー尺度の尺度の項目再検討を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では平成23年度から24年度は高齢者へのライフレビュー法の実施と抑うつ改善に及ぼす効果の検討を目的とした。具体的には、1対象者のスクリーニングと実験条件と統制条件への割り当て、2ライフレビュー法条件と統制条件の介入方法の確立、3効果検証の指標についての信頼性と妥当性の検証を行うことを目的としている。 平成23年度では1高齢者のライフレビュー法が抑うつ改善に及ぼす効果の検討に関する予備面接、2効果検証の指標としてライフレビュー機能尺度の項目の整備の2点に重点を絞って実施した。1に関する予備面接では、(1)スクリーニング方法の確立、(2)ライフレビュー法の実施方法の確認、の2点を達成することができた。2では、ライフレビュー機能尺度については、以前に収集した尺度の因子構造を確認したところ(1)地域在住者に回答しやすい項目に改訂する、(2)重複のある項目をはずす、(3)得点を算出しやすい工夫を行う、の3つの観点から因子負荷量の高い順に8項目ずつを採用した。最終的な因子分析の結果、40項目5因子を抽出し、効果検証指標の信頼性と妥当性の検討の一部である尺度項目の確立を達成することができた。 達成度については、やや遅れている。その理由として、介入開始時に市町村窓口担当者への説明が十分ではなく、研究実施フィールド内で研究対象者とはならない対象者の別の問題に対する臨床面接の紹介を受けたり、重度の障害のある高齢者への別専門機関への依頼や対応について、連絡や連携などに時間を割きすぎてしまい、スクリーニング前に時間がかかりすぎたことが問題点としてあげられる。今後は、市町村窓口との関係作りも重要であるが、スクリーニング方法を確立させ、研究目的を明確に説明し、対象者への丁寧な説明を行うとともに、研究と臨床活動の枠組みを明確にして、実証研究を推進させることに焦点を当てていくことが必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度-24年度までの研究計画:本研究では平成23年度から24年度は高齢者へのライフレビュー法の実施と抑うつ改善に及ぼす効果の検討を目的とした。具体的には、1対象者のスクリーニングと実験条件と統制条件への割り当て、2ライフレビュー法条件と統制条件の介入方法の確立、3効果検証の指標についての信頼性と妥当性の検証を行うことを目的とした。今後の研究の推進方策:平成24年度は、1ライフレビュー機能尺度と人生評価尺度の信頼性と妥当性を検討すること、2高齢者へのライフレビュー法の実施と抑うつ改善効果の検証を行う。1の尺度の信頼性と妥当性の検討では、約500名以上の成人(60歳以上、世代の人数や男女の偏りをなくす)を対象にして質問紙調査を実施する。40項目のライフレビュー機能尺度と基準変数となる質問項目などを用意して基準関連妥当性を検討し、再検査法による信頼性を検討する予定である。2では、軽度抑うつを有する高齢者のスクリーニング方法を確立させ、対象者のスクリーニングを行い、性別、年齢、抑うつ得点によってマッチングした後で、ライフレビュー法を実施する群(LR群)、社会的交流を実施する群(SI群)、待機した後にライフレビュー法を実施する群(WLC群)の3群に無作為に割り付けを行う。予備面接の結果から、1週間に1回では次の回までに認知的吟味を行うのには短期間であるため、高齢者の生活時間に合わせ、ゆとりをもった介入を行うために2週間に1回の介入を10回とフォローアップを3回(1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後)行うこととした。 研究を遂行するのに、時間的には制約があるために対象者が決まり次第順次面接を実施することや、平成24年度中に研究が終了しなければ、平成25年度に繰り越して実施することを対応策として考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度には全体で900千円の使用を計画している。内容は以下のとおりである。効果評価分析や入力作業と統計的検定を実施するため、研究フィールドに移動可能なノート型パソコンが必要となる(約200千円)。消耗品費としては、平成24年度に調査を実施する予定をしているライフレビュー尺度や人生評価尺度の信頼性と妥当性を検証するために、統計解析を行うためにノート型パソコン用の統計ソフト:IBM SPSS Statistics Base(100千円)、Amos(72千円)、IBM SPSS Advanced(100千円)、IBM SPSS Regression (55千円)、IBM SPSS Categories(55千円)、IBM SPSS Data Preparation(55千円)、IBM SPSS Custom Table(55千円)、IBM Exact Tests(55千円)の購入が必要となる。そのほか、研究図書や文房具などの購入を予定している(9千円)。国内旅費としては、平成23年度と同様に調査旅費(150千円)が必要となる。外国旅費は研究の進行状況から平成25年度に使用する予定を立てているため、平成24年度には外国旅費は使用計画に入れないこととした。そのほか、質問紙調査を実施するため、調査用紙の郵送費などの使用を計画している(10千円)。 次年度使用額として16,100円が生じたが調査出張費の予備、消耗品の不足による予備のために年度末まで保留しておいたが本年度中には不足が生じなかったため使用しなくて済んだために生じた。これらは次年度の郵送費と図書や消耗品費に充当する予定である。
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