2012 Fiscal Year Research-status Report
地域在住高齢者の抑うつ低減のためのライフレビュー法の開発に関する研究
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23530928
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
志村 ゆず 名城大学, 人間学部, 准教授 (90363887)
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Keywords | 高齢者 / 抑うつ感 / 心理療法 / ライフレビュー法 / 効果評価 / 尺度開発 |
Research Abstract |
本研究では、抑うつ感のある高齢者をスクリーニングし、ライフレビュー法を実施し統制条件と比較することによって抑うつ低減の効果を検証することを目的としている。平成24年度は、1ライフレビュー機能尺度と人生評価尺度の信頼性と妥当性を検討すること、2高齢者のライフレビュー法の実施と抑うつ改善効果の検証を実施した。 1に関する尺度の信頼性と妥当性では、主にライフレビュー機能尺度の信頼性を検討し、内的整合性をα係数で算出し.79~.86(1%水準で有意)の値を算出でき高い信頼性の値が得られた。再テスト法では、.61~69(1%水準で有意)となり、十分な信頼性の値といえるが、今後は各項目の安定性の値を検討し信頼性の値の高い項目のみを残すなどの工夫を検討する。ライフレビュー機能尺度における基準関連妥当性の検討は現在準備中であり24年度内に実施することができなかった。人生評価尺度においては、10項目4件法の項目を作成したが、信頼性と妥当性の検討を24年度内に行うことができなかった。 2に関する検討では、市役所の高齢福祉課の窓口を通じて11名の対象者を紹介された後、スクリーニング検査と研究についての説明と同意の結果7名の高齢者が研究に参加した。その後、短期間の社会的交流で抑うつが軽減した対象者、抑うつへのアプローチが身体的な問題に起因する対象者を除き3名の対象者が計画に沿った10回の面接を終結することができ抑うつが低減していた。これよりライフレビュー法実施群の一部の対象者への介入を行い効果を検討することができたといえる。 以上より本年度の研究実績としては、1ライフレビュー機能尺度の信頼性の検討、2ライフレビュー法の実施と効果の検討の一部を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では平成24年度の計画として1対象者のスクリーニングと実験条件と統制条件への割り当て、2ライフレビュー法条件と統制条件の介入方法の確立、3効果検証の指標についての信頼性と妥当性の検証を行うことを目的とした。 平成24年度では、平成23年度に引き続き1と2における高齢者へのライフレビュー法の実施と抑うつ改善効果の検討、3においては23年度に構成された5因子40項目のライフレビュー機能尺度の信頼性の検討、などの研究目的全体における一部分を達成することができた。 1と2における遅れの原因は、行政窓口に制約があり高齢者への大規模なスクリーニング検査は実施することができず、窓口で紹介された少数の対象者に対してスクリーニング検査を実施して対象者を絞り込むという手続きをとった。そのため介入条件への無作為割り当てを厳密に行うことができず、対象者が決まり次第順次ライフレビュー法の介入を実施した。他方で、抑うつのある高齢者で面接を希望する人の心理的な原因が多方面にわたり、原因を特定し別窓口の紹介までにある一定程度回数の面接(アセスメントと窓口との連携)を行うことがあるため、研究対象者にのみ時間を割くことができないためである。時間はかかったが2においては実験条件のライフレビュー法を対象者との関係を維持しながら実施することができ、3名が終結に到りいずれの対象者も抑うつの改善がみられた。 3における遅れは、ライフレビュー機能尺度の再テスト法を地域在住の成人に限定して実施することは、郵送による再テスト調査となり、一定以上の新規の対象者を得るのに時間がかかり、配布と回収と一時期に実施することができなかった。そのため別評価尺度である人生評価尺度については、臨床的な観点から10項目4件法の項目を作成したが信頼性と妥当性の検討は25年度に繰り越して行うこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度までの研究計画:24年度の継続として研究1「高齢者のライフレビュー法が抑うつ改善に及ぼす効果の検討」および研究2「ライフレビュー法による抑うつ改善に関する効果要因の検証を行うことを目的とした。 今後の研究の推進方策:平成25年度は、平成24年度に引き続き、1ライフレビュー機能尺度の妥当性の検討と人生評価尺度の信頼性と妥当性の検討を行うこと、2高齢者へのライフレビュー法の実施と抑うつ改善効果の検証、3ライフレビュー法による抑うつ改善に関する効果要因の検証を行う。1のライフレビュー機能尺度の妥当性の検討では約500名以上の成人(60歳以上)を対象にして質問紙調査を行い、基準関連妥当性を検討する予定である。2における変更点は、大規模な対象者へのスクリーニングを実施することが個人情報保護などの面で制約されるため、厳密な対象者マッチングによる無作為割り付け法が困難となる。そのため、対象者が紹介された時点で順次介入群を振り分けていくこととする。その際には、すでに25年度に終結した3名の対象者(LR群)とのバランスを考慮に入れながら各条件に割り当てることとした。25年度は3名以上の対象者にライフレビュー法(LR群)、社会的交流を実施する群(SI群)、待機した後にライフレビュー法を実施する群(WLC群)に順次割り付け、2週間に1回の介入を10回とフォローアップを3回(1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後)行うこととした。3に関する研究に関わるものとして、1で配布する質問紙に抑うつに関する尺度(GDSなど)の質問紙を加えて配布することとする。 平成25年中に予定の研究が遂行できなければ、平成26年度に繰り越して実施することを対応策として考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度には全体で900千円の使用を計画している。内容は以下のとおりである。消耗品費としては、介入実施記録や質問紙などを電子化して保管するためのスキャナー(45千円)、効果評価用質問紙や質問紙調査用資料の印刷のためのプリンタ(65千円)およびトナー(10千円×10)、分析結果および資料保管のための大容量のUSBメモリスティックやSDカードなど(60千円)、調査研究遂行および分析のための文具(60千円)、研究を公表する準備としての研究図書(60千円)、平成25年度に購入したノート型パソコン用のセキュリティソフト(10千円)を予定している。国内旅費としては調査旅費として(300千円)が必要となる。外国旅費は研究の進行状況から今年度は国際会議で発表する準備が整わないため使用計画に入れないこととした。そのほか質問紙調査を実施するための郵送費(100千円)、印刷費(100千円)を計画している。 次年度使用額として2,506円が生じたが年度末における消耗品の不足のための予備として保留していたため生じたものである。これらは平成25年度における郵送費や消耗品費に充当する予定である。
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