2011 Fiscal Year Research-status Report
事象関連電位による虚偽検出における新たな多重プローブ法の確立
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23530937
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Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
平 伸二 福山大学, 人間文化学部, 教授 (30330731)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 事象関連電位 / 虚偽検出 / 多重プローブ法 / P300 / 妨害工作 |
Research Abstract |
事象関連電位による虚偽検出では,事件に関係のある裁決刺激(プローブ),事件に無関係な非裁決刺激,ボタン押しを要求される標的刺激からなる,3刺激オッドボール課題を使用している。そして,検査方法としては,単一プローブ法と多重プローブ法があり,さらに,多重プローブ法には,標的刺激を複数呈示する従来法と,研究代表者が考案した標的刺激を一つ呈示する方法がある。 平成23年度の研究では,従来の標的刺激6,裁決刺激6,非裁決刺激24の多重プローブ法(6:6:24)ではなく,標的刺激1,裁決刺激6,非裁決刺激24からなる新たな多重プローブ法(1:6:24)の有効性を検討した。裁決刺激は参加者の氏名,学部,生年月日,星座,学生番号,出身都道府県という自我関与刺激を用いた。参加者には自我関与刺激が他の刺激と比較して,脳波測定で検出されないように努力することを教示した。その結果,標的刺激が18.4,裁決刺激が12.7,非裁決刺激が9.6マイクロボルトとなった。分散分析で主効果が認められため多重比較を行った結果,最も重要な裁決刺激と非裁決刺激の間に有意差が認められた(p<.05)。また,10名の参加者中9名(検出率90%)が,非裁決刺激よりも裁決刺激に大きなP300振幅を示した。つまり,新たな多重プローブ法の有効性を確かめることができた。従来の多重プローブ法(6:6:24)は,標的刺激が6種類と多く,参加者への課題要求が複雑すぎるという問題があった。その証拠として従来法の標的刺激に対する反応時間が,800 ms以上であったのに対し,本研究では411 msとなり,参加者にとって容易な課題であることも証明された。このことは,緊張感の高い実務における被検査者の課題としてよりふさわしいことを意味し,事象関連電位による虚偽検出の実務応用の可能性を高めたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験プログラムの開発が遅れ,個々の犯罪事実認識と事件全体関与の判定の可能性を検討する研究2が完結できなかった。しかし,今年度予定していた裁決刺激・非裁決刺激の同比率呈示課題の可能性を探る研究3の一部を先行実施できた。また,国内外の学会で資料収集を図る予定であったが,国際学会には校務のため出席できなかった。但し,日本心理学会ではワークショップ「虚偽検出を心理学する」を企画して,記憶と感情研究から再評価し,開催記録をPDFファイルとして120箇所に送付するとともにHPで公開した。
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Strategy for Future Research Activity |
個々の犯罪事実認識と事件全体関与の判定の可能性を検討する研究2を最優先ですすめる。文字刺激と画像刺激の比較や同時呈示などの研究4も推進する。そして,同比率呈示課題を検討する研究3は,第30回日本生理心理学会大会と中国四国心理学会第67回大会で発表するとともに,研究4はイタリアでのIOP (International Organization of Psychophysiology)2012で発表する。また,国際電子ジャーナルにもアブストラクト審査を終えて(Frontiers in Human Neuroscience, 特集号"Basic and applied research on deception and its detection", Matthias Gamer and Wolfgang Ambach (Eds.)),2012年度内に本論文を投稿する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究2-4の実験遂行と統計処理のためにコンピュータ・電極などの物品費,実験補助・データ整理等の人件費が必要である。また,国際学会(16th World Congress of the International Organization of Psychophysiology : IOP, Pisa, Italy, September 13-17, 2012)への参加・発表のために旅費,国際電子ジャーナル(Frontiers in Human Neuroscience)への投稿のためにその他(英文校閲費)の研究費を使用する計画である。
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Research Products
(3 results)