2011 Fiscal Year Research-status Report
新任教師におけるリアリティ・ショックのプロセスの解明と予防プログラムの効果検証
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23530939
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Research Institution | Hijiyama University |
Principal Investigator |
松永 美希 比治山大学, 現代文化学部, 講師 (60399160)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 菜々子 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (80350437)
石井 眞治 比治山大学, 現代文化学部, 教授 (60112158)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ストレス / メンタルヘルス / 教師 / リアリティ・ショック / 予防的介入 / 被援助志向性 |
Research Abstract |
平成23年度は,リアリティ・ショックがストレス反応に及ぼす影響を明らかにするために,横断的研究を行った。広島県内2市の教育委員会の協力を得て,公立小・中学校に採用されて1年以内の新任教師160名を対象に,就職後4ヵ月時(8月)に質問紙調査を実施した。質問紙は,(1)就職前後の職務イメージ変化,(2)教師用リアリティ・ショック尺度(原田・松永・中村,2009),(3)簡易性ストレス調査票のストレス反応に関する項目(下光ら,2009),(4)コーピング特性簡易尺度(BSCP;影山ら,2003),(5)ソーシャルサポート尺度(小牧・田中,1993),(6)状態被援助志向性尺度(田村ら,2006),(7)特性被援助志向性尺度(田村ら,2006)を用いて構成した。質問紙調査の結果,対象者の約4割は,就職前にポジティブなイメージを持っていたにも関わらず,就職後にネガティブなイメージに変化していた。さらに,そのようにネガティブに職業イメージが変化した者ほど,ストレス反応を強く表出しており,抑うつ感が強くなっていた。また,職業イメージ変化と被援助志向性(状態及び特性)との関連を検討したところ,援助を求めることの態度や抵抗感には違いが見られなかった。しかし,状態被援助志向性の低い者は高い者に比べて,不安感や身体愁訴を強く感じていた。また特性被援助志向性の低い者は高い者に比べて,抑うつ感を強く感じていた。今回の結果から,新任教員においては,就職後に生じるリアリティ・ショックがストレス反応に影響することが示唆された。また援助を求めることの抵抗感や否定的態度がストレス反応に影響する可能性についても示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,23年度にリアリティ・ショック尺度の整備と,それを用いて新任教師のストレス反応との関連を検討することを目標としていた。そして,24年度に予定している縦断的研究や,25年度に予定している研修プログラムの作成・実施に資する結果を得ることが目標であった。23年度は,計画段階にて内諾を得ていた2市の教育委員会の研究協力を得て,横断的研究を計画通り実施できた。また,リアリティ・ショック尺度については,実際の職業イメージの変化との関連等を分析することでき,尺度の妥当性について検討できた。さらに,リアリティ・ショックとストレス反応との関連についても,適切な質問紙を用いて検討することができた。したがって,23年度までにおいては,おおむね順調に研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は,計画どおり,複数市の教育委員会に研究協力を要請して,就職後~9ヶ月後までの縦断的調査を実施する予定である。そして,就職後のリアリティ・ショックの変化と,それが新任教師のメンタルヘルスに与える影響を検討するとともに,リアリティ・ショックやメンタルヘルスを緩和する要因についても詳細に検証する予定である。それらの知見をもとに,新任教師を対象としたメンタルヘルス研修プログラムの骨子を作成していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度では,複数市の教育委員会に研究協力を要請して,就職後~9ヶ月後までの縦断的調査を実施する予定である。したがって,複数市の教育委員会との打ち合わせ等を行う際の旅費として支出する。またデータ保存と研究打ち合わせ用にノートPCと外付けハードディスク(その他メディア)を新規購入する。 さらに23年度の研究成果を国際心理学会(2012年7月 南アフリカ),日本行動療法学会(2012年9月 東京)にて発表予定であり,それらの参加費および旅費を研究費から支出する予定である。
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Research Products
(2 results)