2012 Fiscal Year Research-status Report
新任教師におけるリアリティ・ショックのプロセスの解明と予防プログラムの効果検証
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23530939
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Research Institution | Hijiyama University |
Principal Investigator |
松永 美希 比治山大学, 現代文化学部, 講師 (60399160)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 菜々子 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (80350437)
石井 眞治 比治山大学, 現代文化学部, 教授 (60112158)
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Keywords | 教師のストレス / メンタルヘルス / リアリティ・ショック / 被援助志向性 / 予防的介入 |
Research Abstract |
平成24年度は,リアリティ・ショックの程度がその後のストレス反応を予測するかどうかを明らかにするために,縦断的研究を行った。広島県内の教育委員会の協力を得て,公立小・中学校に採用されて1年以内の新任教師117名を対象に,就職後4ヵ月後(8月上旬),7ヶ月後(10月中旬),11ヶ月後(2月中旬)に質問紙調査を実施した。質問紙は,①就職前後の職務イメージ変化,②教師用リアリティ・ショック尺度(原田・松永・中村,2009),③簡易性ストレス調査票のストレス反応に関する項目(下光ら,2009),④コーピング特性簡易尺度(BSCP;影山ら,2003),⑤ソーシャルサポート尺度(小牧・田中,1993),⑥状態被援助志向性尺度(田村ら,2006),⑦特性被援助志向性尺度(田村ら,2006),⑧自動思考尺度(坂本ら,2004)を用いて構成した。質問紙調査の結果,8月時点において,就職前にポジティブなイメージを持っていたにも関わらず,就職後にネガティブなイメージに変化していた者は約2割であり,前年度(4割)に比べてその割合は少なかった。 また8月時点(就職4ヶ月)のリアリティ・ショックの程度とその後のストレス反応との関連について検討したところ,就職7ヶ月後(10月)のストレス反応(r=.51, p<.001),就職11ヶ月後(2月)のストレス反応(r=.56, p<.001)ともに中程度の正の相関を示した。さらに重回帰分析の結果,11ヶ月後のストレス反応については,初回調査時(8月)のストレス反応と基本属性(性,年齢,担任の有無)を統制しても,リアリティ・ショック(β=.30, p<.01)とネガティブな自動思考(β=.16, p<.10)は正の影響を与えていた(R2=.52, p<.001)。このことから,リアリティ・ショックの程度がその後の適応を予測する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,新任教師のリアリティ・ショックとメンタルヘルスとの関連について,23年度には尺度の整備と横断的検討を,また24年度には縦断的検討を行うことを目標としていた。いずれについても計画通りに実施できた。またリアリティ・ショックのみならず,自動思考や被援助志向性といった認知的変数が新任期のメンタルヘルスには関連している可能性も明らかになった。 以上のように,平成23年度,24年度の研究結果から,25年度に予定している研修プログラムの作成・実施に資する結果を得ることできた。したがって,23年度までにおいては,計画どおりに研究を実施できている。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は,計画どおり,新任教師を対象としたリアリティ・ショックへの対応に特化した研修プログラムを策定する。すでに,複数市の教育委員会に研究協力を依頼しており,研修プログラムの実施について内諾を得ている。また研修プログラムの効果を検討するため,プログラム前・後・6か月後において研究2(平成24年度)と同様の質問紙調査を実施し,対照群との比較検討を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度では,新任教師を対象としたリアリティ・ショックへの対応に特化した研修プログラムを策定する。そのため,プログラム作成にあたり,教育委員会および研究分担者との打ち合わせを行うための交通費を旅費から支出する。またプログラム作成にあたり,関連書籍を購入する予定である。 研修実施後は,研修プログラムを全国自治体の初任者研修等に活用できるように,実施マニュアルを作成する。印刷費を使って,マニュアルをパンフレットにして配布する予定である。またwebからもダウンロード可能にする。さらに,研修後の継続学習を目的としたwebコンテンツを業者に依頼して作成する予定である。 さらに23年度および24年度の研究成果を世界認知行動療法会議(2013年7月 ペルー),日本行動療法学会(2013年8月 東京),日本心理学会(2013年9月,北海道)にて発表予定であり,それらの参加費および旅費を研究費から支出する予定である。
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