2011 Fiscal Year Research-status Report
性被害者の臨床心理査定、臨床心理面接に関する研究~PTSDに視点をあてて~
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23530945
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Research Institution | Kagoshima Immaculate Heart University |
Principal Investigator |
餅原 尚子 鹿児島純心女子大学, 国際人間学部, 教授 (70352474)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久留 一郎 鹿児島純心女子大学, 人間科学研究科, 教授 (40024004)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 性被害 / PTSD / 臨床心理査定 / 臨床心理面接 / 心理教育 / ロールシャッハ・テスト / 裁判員裁判 / コンサルテーション |
Research Abstract |
性被害によってPTSD(外傷後ストレス障害)を被った被害者への適切な臨床心理査定、臨床心理面接のありようについて、事例を通して明らかにし、同時に、裁判員裁判のありよう、適切な支援システムの構築を試みることを目的に、研究をすすめている。 平成23年度は、14事例の性被害者および家族、支援者の臨床心理査定、臨床心理面接、心理教育を実施した。臨床心理査定の結果から、全事例にPTSDの症状が認められた。現在のところ、症状は安定している。 さらに、1990年以降に実施した性被害者のロールシャッハ・テストの結果の分析を試みた。ロールシャッハ・テストを実施することで、「忌まわしい出来事」に直接触れることなく(「再体験(フラッシュバック)」の症状を煽ることを抑制する)、臨床心理査定が可能になるのではないか、という仮説のもと、3事例の性被害者について反応内容等を分析した結果、2事例には、PTSDの症状である「再体験」「回避と感情の麻痺」「神経過敏」の症状がロールシャッハ反応として現れることが見いだされた。1事例は、ロールシャッハ・テスト実施後に、PTSD症状が軽減しており、ロールシャッハ・テストのPTSDに対する臨床心理査定の有効性、侵襲性と促進性を示唆するものであった。 また、裁判員裁判が始まり、性犯罪への厳罰化傾向が明らかになった。性被害者の裁判員裁判に傍聴し、付き添い支援をした犯罪被害者支援センターの相談員にインタビューをしたところ、被害者によっては、「回避」の感情が強く、向き合おうとする気持ちと同時に、知られたくない気持ちが潜在することがうかがわれた。また、別の事例に対しては、性被害者担当の弁護士へ、被害者の症状や気持ち(裁判に対する抵抗など)を代弁することで、理解を得、時熟を待つという支援のありようについてコンサルテーションすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に基づき、1990年からかかわってきた性被害者の事例分析した。特に、ロールシャッハ・テストについて、複数の事例から臨床心理査定のありようについて示唆を得ることができた。 また、平成23年度新規の事例への臨床心理査定、臨床心理面接についても、14事例に実施するなど、順調に進んでいる。研究期間内に、さらなる事例の蓄積をし、研究目的を果たしていく予定である。 平成23年度は、性被害者の裁判員裁判を傍聴することはできなかったが、傍聴した支援員から感想等を聴取することができた。また、裁判に対する性被害者の心情を弁護士へ代弁することができた。 以上の理由から、おおむね順調に進展しているといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も継続して、性被害者への臨床心理査定、臨床心理面接の事例の蓄積と、その症状の経過、回復力(レジリエンス、外傷後成長など)を分析していく予定である。 さらに、裁判員裁判については、可能な限り傍聴したり、研究協力機関の犯罪被害者支援センターの相談員により、裁判の付き添い体験の情報を得る予定である。 また、性被害を被りやすいといわれる女性(10代後半から20代女性)を対象に、告訴、事情聴取を含め、裁判等のありようについてアンケート調査を実施し、一般女性の心理や、求めていること等を明らかにしていく予定である。 最終年度は、本研究の結果と、海外の性被害者への臨床心理査定、臨床心理面接のありようや、国民が刑事裁判に参加する制度(参審制度等)について学術交流を通して、比較検討し、我が国の精神文化に照らしつつ、性被害者への支援システムの構築を試みる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アンケート調査の分析に必要な、パソコン、統計ソフト他、消耗品(用紙、印刷インク等)、通信費(切手等)、裁判の傍聴に必要な交通費、学会等参加のための交通費、被害現場撮影等に必要なデジタルビデオカメラ等を購入予定である。
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Research Products
(9 results)