2011 Fiscal Year Research-status Report
感覚性強化による動物のオペラント行動の形成と脳内ドパミン作動性神経系との関連性
Project/Area Number |
23530947
|
Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
筒井 雄二 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (70286243)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 感覚性強化 / 視覚刺激 / 聴覚刺激 / ラット / ドパミン神経 / 音楽 / インターネット依存 / オンラインゲーム依存 |
Research Abstract |
インターネット依存やオンラインゲーム依存の背景には,視聴覚刺激による行動の強化の問題,すなわち感覚性強化の問題が関与すると考えられている。本研究では視覚刺激や聴覚刺激など,感覚性強化子を用いた強化学習の動物モデルを構築し,感覚性強化の神経機序を明らかにしたい。 23年度は,視覚刺激や聴覚刺激を感覚性強化子とする学習モデルを構築することを目標に研究を行ったが,現段階では聴覚刺激を使った感覚性強化のモデルを構築するところまで到達し,視覚刺激を使ったモデルの構築が若干遅れている状況にある(平成24年6月に着手予定)。 我々は聴覚刺激として音楽を使用した。装置内の2本のレバーのうち一方のレバーをラットが押すといつも音楽が提示される仕掛けにした。他方のレバーを押した場合にはノイズが提示されるようにした。2本のレバーのうちラットがどちらのレバーを多く選択するかというラットの選択行動を分析することにより,ラットが音楽を聴きたいと思っているかどうか(音楽への選好)がわかる。 音楽として,ビバルディの「四季」,サラブライトマンが歌う「Time to say goodby」,鼓童という創作和太鼓のグループによる「彩」(いずれも約15秒のさわりの部分)のどれかを提示した。一方,ノイズについては,音楽刺激として使用した3曲につきパワースペクトルを調べ,それとまったく同じパワースペクトルを有するノイズを作成し,使用した。 実験の結果,8匹中,6匹のラットは音楽が提示されるレバーを好んで選択したことから,ラットが音楽刺激を選好した可能性が考えられた。ラットがノイズを忌避した可能性なども考えられることから,さらに補助的な実験も行った上で,ラットの音楽に対する選好について結論付けたいと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
23年度に予定していた研究は詳細には2系統ある。「研究実績の概要」に記したとおり,一つは視覚刺激を用いた学習モデルの構築であり,もう一つが聴覚刺激を用いた学習モデルの構築である。そのうち後者が年度内に達成された。ただ,前者についてもすでに準備を整え,間もなく実施する予定であり,それらの遅れは24年度前半には解消できるものと見込んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では視覚刺激と聴覚刺激を用いた感覚性強化の学習モデルを構築し,それらのモデルを使って脳内ドパミン神経の関与を追及する。現段階では聴覚刺激を用いたモデルの構築が終わっているが,視覚刺激を用いたモデルの構築が24年度の課題として残っている。 24年度は,まず視覚刺激を用いた感覚性強化モデルを至急,構築する。このモデルが完成した場合,感覚性強化と脳内ドパミン神経との関係を明らかにするため,薬理学的方法を利用しドパミンD1受容体遮断またはドパミンD2受容体遮断の影響について分析する。 また,「研究実績の概要」でも述べたとおり,23年度の研究においてラットが音楽に対する選好を形成する可能性が示された。動物が音楽を好むということが事実とするならば,特にネズミを対象とした研究では前例がなく,芸術と動物の認知能力との関連性を追求する上で大きな意義がある。聴覚刺激のうち,特に音楽刺激を用いた感覚性強化のモデルについては,レバー押し場面以外の方法を用いて引き続き検討していきたいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記,今後の研究の推進方策に示した通り,24年度は視覚刺激を使用した感覚性強化のモデルを構築するための行動実験を行い,モデルの完成ののち,薬理学的手法を用いた実験を実施する。そのため,実験動物やその維持管理に関わる消耗品,薬物や薬品調整に関わる消耗品類の準備に予算を投じる予定である。また,脳内のドパミン含量をHPLCと呼ばれる方法で分析する予定で,そのために必要な生化学実験機器についても購入したい。 一方,音楽を使った感覚性強化の行動実験については,行動実験レベルで動物の音楽に対する選好を調べていきたいと考えており,走路やレバー押し実験のための行動実験装置に研究費を充当する必要性も生じる可能性が考えられる。 さらに,23年度の研究成果については24年度中に開催される学会でデータを報告する。そのために必要な経費として支出する予定である。
|