2012 Fiscal Year Research-status Report
感覚性強化による動物のオペラント行動の形成と脳内ドパミン作動性神経系との関連性
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23530947
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
筒井 雄二 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (70286243)
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Keywords | 感覚性強化 / オペラント条件づけ / ラット / 強化 / 視覚刺激 / 聴覚刺激 / ドパミン作動性神経 / 側坐核 |
Research Abstract |
本年度は条件性場所選好事態において,音楽刺激を用いた感覚性強化がラットに形成できるかを調べた。T字型走路のスタート地点にラットをおき,左右のゴールを目指して走るようにラットを訓練した。自由摂食時の85%の体重を維持する摂食制限下でラットを飼育し,ゴールでは45mgのエサ粒を報酬として与えた。ラットが左右のどちらのゴールに到達してもエサ粒を与えたが,一方のゴール地点では音楽刺激を,他方のゴール地点ではノイズ刺激をそれぞれ90秒提示した。どちらかのゴールを選択した場合,ラットがそこから引き返すことができないよう,ギロチン式ドアでラットをゴールエリアに閉じ込めた。このような条件づけを10日間実施した後,ラットに走路内を15分間,自由に探索させて,ラットがどのエリアを好んで探索したかを調べたところ,音楽を提示したゴール付近を探索する時間が,ノイズを提示したゴール付近の探索時間より長いことがわかった。このことは,条件性場所選好事態でも,ラットが音楽への選好を示すことを示唆している。 また,今年度は光刺激(=視覚刺激)を強化子として用いた感覚性強化実験を試みた。レバーを装備したオペラント実験箱にラットを入れ,ラットがレバーを押している最中に7W電球を点灯させた。このことを摂食制限を行っていない12匹のラットで試したところ,ラットのレバー押し行動が統計的に有意に増加することがわかった。さらに,別の12匹のラットでは,自由摂食時の体重の85%を維持するような摂食制限下で飼育を行い,同様の実験を行ったところ,同じくレバー押し行動の増加が認められたが,摂食制限のなかった場合に比べて,より顕著な反応数の増加があった。 以上の行動実験の結果を踏まえ,25年度には摂食制限下で飼育したラットを対象とし,光刺激を強化子としたレバー押し実験により,感覚性強化と脳内ドパミン系との関連性を追求する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
動物を被験体として感覚性強化という問題に取り組んでいる。研究の第一段階において,感覚性強化の行動モデルを確立し,次の段階で,その行動モデルを利用して感覚性強化の神経機序を解明することが当初の予定であった。 研究の第一段階において,音楽を強化刺激とする感覚性強化の行動モデルの作成に着手したが,動物が行動モデルを習得するのに要する訓練期間が予想外に長く,訓練期間を短縮できるような行動モデルを探索する作業を開始した。具体的には,レバー押し場面を使うのではなく,条件性場所選好という課題場面を使った行動モデル(行動モデルの一つの候補として交付申請書には記載),音楽刺激ではなく光刺激を使った行動モデルの設定である。 今後の研究を速やかに進めるために必要であったこれらのオプショナルな実験を遂行したため,当初の予定に比べ,若干の遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によって確立された動物の感覚性強化の行動モデルの中から,(1)短期間でラットが課題を習得できるということ,(2)データが比較的安定しているということ,以上の理由より,光刺激を使った感覚性強化モデルを今後の研究には投入していきたい。 25年度は感覚性強化と脳内ドパミン系との関係について実験的に検討する。脳部位としては,当初の予定通り,中脳-辺縁ドパミン系が投射する側坐核に注目し,当該部位におけるドパミンによる神経伝達が感覚性強化にどのように関わっているのかを明らかにすることが研究の大きな目的である。 研究の最初のステップとして,ドパミン伝達には限定せず,側坐核を広く破壊し,まずは側坐核全体として感覚性強化と何らかの関係があるかを明らかにする。そのため,電気的破壊を側坐核に施し,破壊が感覚性強化に影響を与えるかどうかを分析する。感覚性強化が破壊によって影響を受けることが分かった場合,次のステップとして側坐核のドパミン伝達を抑制する薬物を用いた処置を動物に施し,感覚性強化の遂行を調べていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
行動実験は防音箱に入れられたオペラントチャンバと呼ばれる装置の内部で行われる。オペラントチャンバ内部の動物の様子は実験者からは見えないため,動物の行動実験に支障をきたしている。チャンバ内部を,防音箱の外部のモニターに投影するための実験モニターシステムを導入したいと考えている(50万円)。 また,現在は4台のオペラントチャンバを実験で使用しているが,実験に長時間を要しているため,別系統でさらにオペラントチャンバを増設することは,実験効率を高めることに効果的だと考える。そこでオペラント学習実験用データ収録セットおよびオペラントチャンバを購入する(150万円)。 25年度の実験では側坐核のドパミン伝達を阻害する処置を実験の中に取り入れる。そのため,それらの処置が側坐核のドパミン含量の低下にどれだけ効果的であったかを検証する必要が生じる。HPLCでドパミン含量を測定するためのカラム等,必要機器を購入する予定である(50万円)。
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