2012 Fiscal Year Research-status Report
対側ノイズ提示時の能動的聴覚弁別にともなう聴性脳幹反応の変容
Project/Area Number |
23530950
|
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
池田 一成 東京学芸大学, 教育実践研究支援センター, 准教授 (50293006)
|
Keywords | 生理 / 事象関連電位 / 選択的注意 / 聴性脳幹反応 |
Research Abstract |
平成24年度においては次のように2件の実験をおこなった。 1、前年度の計画に沿って両耳分離聴課題時の事象関連電位(ERP)を計測した。左耳のピップ音(0.5と0.6kHz)は右耳のピップ音(1.5と1.7kHz)よりも高音圧にした。刺激条件として右耳へ高音圧ノイズを連続提示する条件と、右耳へのノイズ提示が無い条件を設けた。左耳ピップ音に対する聴性脳幹反応(ABR)ならびに後期ERPを左耳注意課題と右耳注意課題の間で比較した。ABRでは左耳注意課題で微弱な振幅増強を検出したが、右耳ノイズ条件とノイズなし条件の間でABR増強の潜時に差異が生じた。後期ERPでは左耳注意課題時において何れの条件でも前期Ndと後期Ndの両者が出現したが、潜時100ms未満の注意関連陽性電位についてはノイズなし条件に比べ右耳ノイズ条件で出現が困難になった。 2、もう一つの実験では中耳反射の生じない音圧で対側マスキングを行うとともに、やはり中耳反射の生じない音圧でピップ音(1kHz)またはクリック音(矩形波)を提示し、誘発されたABRを検討した。聴覚課題としてはオッドボール課題を用いず、単一音(ピップ音のみ、もしくはクリック音のみ)の欠落を検出する課題を採用した。その結果、視覚課題時と比べ、聴覚課題時ではピップ音に対しABR振幅の増強を観察した。またこの効果は両耳にピップ音を同時提示し、対側マスキングを実施しない場合にも見られた。一方、このような注意効果をクリック音によるABRから見出すことは困難であった。視覚課題時と比較したとき、聴覚課題時の後期ERPの振幅増強はN100以前の陽性電位とN100以降の陰性電位で確認された。ただし両電位のうち、ピップ音に対しては陰性電位増強を見出すことが困難な場合があり、クリック音に対しては逆に陽性電位増強を見出すことが困難な場合が生じた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画以上に進展している、と考えられる。 ABRの注意効果を両耳分離聴課題で検出することに成功しただけでなく、さらに踏み込んで本研究の前提とする仮定をくつがえす事実を確認したためである。本研究ではABRに注意効果を生じさせる刺激条件として2つの事項を前提としていた。すなわち、ABRの注意効果は1)高音圧の白色ノイズを対側耳に提示するとき(対側マスキング時)、かつ2)標的音と非標的音の弁別(オッドボール課題)がなされるときに成立するとした。しかし、研究実績の概要で述べたように、上記の2条件が満たされない場合でもABRの注意効果が成立することが確認された。
|
Strategy for Future Research Activity |
対側に高音圧ノイズを提示することなくABRの注意効果が検出されることが明らかになったため、平成25年度では通常の両耳分離聴課題(中程度の音圧を誘発音に使用し、高音圧ノイズ提示を行わない)を用いて、ABRならびに後期ERP上における注意の効果を検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度では、刺激音の音圧を計測する機器の更新が必要になったため、人工耳と騒音計の購入をおこない、オージオメータの購入を次年度に変更した。平成25年度ではオージオメータの購入等を実施することにより、研究費を適切に使用する予定である。
|
Research Products
(1 results)