2013 Fiscal Year Research-status Report
対側ノイズ提示時の能動的聴覚弁別にともなう聴性脳幹反応の変容
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23530950
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
池田 一成 東京学芸大学, 教育実践研究支援センター, 教授 (50293006)
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Keywords | 生理 / 事象関連電位 / 選択的注意 / 聴性脳幹反応 |
Research Abstract |
両耳分離聴課題時の事象関連電位(ERP)を次の刺激条件で計測し、左右耳間の音周波数の差異が聴性脳幹反応(ABR)と大脳皮質由来の注意関連陰性電位(Nd)にどのような効果を及ぼすか検討した。刺激として一方の耳へ標準刺激500Hz(p = 0.99)と標的刺激600Hz(p = 0.01)を提示し、もう一方の耳には標準刺激1000Hzと標的刺激1200Hzを提示した(刺激持続は500Hzと600Hzが10ms、1000Hzと1200Hzが5ms、全刺激の音圧35dB SL、刺激開始間隔180-320ms)。刺激条件として左耳へ500Hz、右耳へ1000Hzを提示する第1条件と、左耳へ1000Hz、右耳へ500Hzを提示する第2条件を設けた。両耳分離聴の左耳注意課題と右耳注意課題との間で、各標準刺激に対するERPを比較した。なおERPを算出する際、Ndの出現が明確であった実験セッションのみを分析に用いた。右手利きの参加者12名で検討した結果、Ndは第1条件と第2条件の両者において有意に出現し、左右耳間の音周波数の差異に関わらず大脳皮質水準の選択的注意が成立することを示した。一方、ABRの選択的注意効果は第1条件で有意になったものの、第2条件で検出が困難になり、左右耳間の音周波数の差異に影響されることが明らかになった。標的刺激に対する行動指標(正答率と反応時間)では第1条件の方が第2条件の場合よりも促進されることを示唆した。以上の結果からABRの選択的注意効果が可能になる両耳分離聴条件は限定されていることが示され、また行動指標を用いた左右差の先行研究と部分的に一致する知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画以上に進展している、と考えられる。 平成25年度の目標であった、通常の両耳分離聴課題におけるABRの選択的注意効果の検出を達成しただけでなく、さらにABRの選択的注意効果を制約する条件を見出したためである。平成25年度の研究は、両耳間の音周波数の差異が行動指標に影響することを先行研究と同様に示すとともに、ERPを指標とした場合、その差異の影響が大脳皮質機能(Nd)よりも脳幹機能(ABR)に現れやすいことを示唆し、新たな知見を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
両耳分離聴課題を実施した結果、ABRの選択的注意効果が両耳間の音周波数の差異に影響されることが示唆された。このため、平成26年度では両耳間の音周波数を操作した両耳分離聴課題を主に行い、ABRならびに後期ERP上における注意効果を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究期間を延長し追加実験をおこなう必要が生じたため、その遂行に必要な経費を確保した結果、次年度使用額が生じた。 平成26年度において、主に実験参加者の謝金として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)